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【2】TALENT side
「おはようございます、大希さん」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いしますね」
ラジオ局に入ると、顔見知りのスタッフからの挨拶に営業用の笑顔で返す。
少し離れた柱の向こうから「きゃあ!」という歓声が聞こえた。
半歩後ろを歩くセンリさんをちらりと振り返る。
すれ違うスタッフと挨拶をしているセンリさんの首筋の、シャツの襟でギリギリ見えるか見えない場所に薄く赤い痕が覗く。
「おいっ!ちょっ、…ヒロぉ!」
「センリ…良い?俺、そろそろ限界…」
返事を待たずに首筋を強く吸った。
「あ…ヒ、ロ…」
センリさんの指が後頭部に絡むのを感じながらセンリさんの下肢へと手を伸ばした時
「イタっ!イテテテテっ!!」
後頭部の髪の毛を鷲掴みされ思いっ切り引っ張られた。
「ちょっ!センリさん!センリさん、痛いって!」
「俺は!こんな事をしに来たんじゃない!仕事の話をしに来たんだ!!」
一昨日は久しぶりにセンリさんを抱けると思ったのに、肝心な処で仕事モードに戻ったセンリさんは俺を突き飛ばして今日の予定を早口で告げた。
でも、本当は気づいている…
あの時、ほんの一瞬センリさんも “その気” になりかけていた事を。
もう~、可愛いよなぁ!
今みたいな関係になる前は、何処か遠慮勝ちというか俺に自分の気持ちを絶対に気づかれない様に必死で自制してたみたいだけど、今じゃ偶にだけど甘えてくれるしなぁ。
まぁ、昔の我慢してるセンリも可愛かったけど…
「おい…」
そんな事を思い出しながらセンリさんを見ていた所為か、どうやら少々アウトな表情になっていたらしい。
「顔がニヤけてるぞ。何考えてんだ?」
「え?そ、そう?」
慌てて両手で頬を摩る。
「……どうせさっき向こうから聞こえた声にニヤけてたんだろ」
フイッと視線を逸らした横顔が最高に可愛くて、センリさんに触れたいと手を伸ばしたその時
「ちーちゃん!!」
よく通る声がフロアの奥から聞こえて来た。
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