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声がした方を見ると、若い…男?だよな…が俺達に向かって走り寄って来るのが見えた。
…え?……誰だ?コイツ…それに “ちーちゃん” て…
「ちーちゃん、ちーちゃんって本当に中塚大希のマネージャーだったんだね!」
「だから言ったろ?信じてなかったのか?」
「だって~」
一見、女の子と見紛うくらいに可愛いソイツはセンリさんに近づくと、親し気に声を掛けながら当たり前の様にセンリさんの腕に自分の腕を絡めた。
え?ちょっと待てよ、誰だお前!何センリさんにベタベタ触ってんだよ!?
「普通さ、信じられないでしょ?いきなり “俺は中塚大希のマネージャーをしてる” なんて言われても」
「お前がしつこく聞くからだろ~」
「え~、良いじゃん~。だってちーちゃん、自分のコト全然話してくれないんだもん~」
馴れ馴れしいぐらいべったりくっ付いているソイツを、センリさんは邪険にするでもなく、寧ろ俺には滅多に見せた事の無い…いや初めて見る様な優しい表情で見ている。
「あの……センリ…さん?」
声を掛けると、センリさんはまるで俺の存在などすっかり忘れていたかの様な顔で
「ん?ああ、何だ大希か。どうした?」
「………そのコ、あ、いや…その人は…」
「ああ、親戚の子だよ。従弟の千尋だ」
「初めまして、天堂千尋です」
親戚の子を紹介するのに普通そんな風にする?と言いたくなるぐらいしっかりと且つ自然に、センリさんはチヒロの肩を抱いた。
チヒロもまた当たり前の様に、センリさんに体を預ける風にして居るのが何とも腹立たしい。
「へぇ…従弟…なんだ」
「千尋、お前ちゃんと仕事してるんだろうな?他の人達に迷惑掛けてないだろうな?」
「もう~、ちーちゃんってば本当に心配性だなぁ。ちゃんと昨日も話したでしょ!」
「実際にこの目で見た訳じゃないからな。しかも昨日は一日俺の部屋から出てないだろ」
「だって昨日は休みだったんだもん」
ナ、ナヌっ!?センリさんの部屋に?一日?ど、どういう事だよ?!
思わず問い詰め様として
「あっ、もう直ぐ打ち合わせの時間だぞ。ほら、行くぞ大希!千尋もちゃんと仕事に戻れよ!」
「うん、またねちーちゃん。中塚さんも失礼します」
「あ、あぁ…」
「あっ!ちーちゃん、今日の晩ご飯どうする?遅くなるなら連絡して。俺、作って待ってるから」
「ああ、分かった。ありがとな、千尋」
「っ!?」
会釈の後、爽やかな笑顔を残してチヒロは去って行った。
俺はその後ろ姿を半ば呆然として見送る事しかできないで居た。
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