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【3】MANAGER side
ラジオ番組の収録中、大希の様子は明らかに変だった。
「今日のゲストは中塚大希さんでした。来週は大希さんと彼のマネージャーの天堂センリさんも一緒にゲストに来てくださいます!皆さ~ん、お二人への質問ジャンジャン送ってくださいね~!」
「皆、来週また会おうね」
いつもなら恰好つけた挨拶をファンが喜ぶと知っている声でするのに、今日はそんな素振りが無い。
それでも収録中は人気芸能人としての言動を忘れていないのは流石だと思うけれど…
……いったい、どうしたっていうんだ?
ラジオ局を出て駐車場へと向かう間も、何か様子がおかしい。
「大希、どうかしたのか?」
「…え?何が?」
「収録の間、いつもと様子が違ったぞ」
「………」
「今朝、迎えに行った時は普通だったのにどうしたんだ?何かあったのか?」
車に乗り込み発車してからも、大希は黙り込んだままだ。
何処かボンヤリしているような、それでいて何かを考え込んでいる様な横顔に不安が胸を過る。
大希の部屋の前に到着しても気付いてないのか、車から降りる気配が無い。
「おい、大希。いったいどうしたっていうんだ」
業を煮やして大希の肩を強く押す。
「………あのコ、……誰?」
「は…?あの子?」
「今日会ったチヒロってコ」
振り返った大希の顔は、決してとぼけている訳でも揶揄っている様でもない。
まして本気で俺が言った事を忘れている風でもない。
「言ったろ、あの子は従弟だって」
「本当に?従弟にしては肩抱いたりしてすっごく親密そうだし」
「親密って…千尋とは年が離れてる事もあって昔から可愛がってきたからそう見えるだけだろ」
「でも一緒に住んでるんでしょ?センリさんの部屋にあのコも居るんでしょ?俺…何も聞いてない!」
怒った様な拗ねた様な顔で言われて少し戸惑う。
「それは…彼奴が住んでるマンション、水漏れがあってその工事で一時的に泊めてるだけだ。別に隠してた訳じゃない。黙ってたのは……悪かった」
「ホントに?本当にそれだけなの?本当はあのコとっ!」
「…っ、いい加減にしろ!!早く降りろよっ、俺が帰れねえだろ!」
もう一度、今度は突き飛ばす様に大希の肩を押した。
「センリさんっ!……傍に…居てよ」
訴える様なその眼差しに、言葉を失った。
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