1話 これが俺の日常

2/3
370人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
 俺は落ちていた滉雅の鞄を拾い上げ、滉雅に渡そうと差し出す。  朝食を食べ終えた滉雅は鞄をひったくるように取り、玄関の方へ走って行った。  ため息を吐き、滉雅が食べて空になった食器を片す。  平日でも毎朝このようなやり取りをしているせいか、疲れが溜まってくる。  仕事より滉雅の世話の方が疲れるというのは、どうしてなのか疑問に思う。  俺の仕事はプログラマー。  家でできる仕事のため、出勤するために外へ出ることは殆ど無い。  外に出るとしたら食材やらを買いに出かけるぐらいのものだ。  母と父とは離れて暮らしている。俺達の実家は田舎で、畑や田んぼがあるようなところだった。  俺は高校生の時に上京、滉雅も中学生になると同時に俺に預けられた。  俺は滉雅が高校生になる頃には、二十歳は過ぎていた。  その時は俺もまだ就職して間もない頃だったこともあり、滉雅を養えるほどの余裕はなかった。  今では十二分過ぎるほど稼ぎがあるせいか最近、滉雅の我儘が酷くなっている気がする。  それに滉雅も今では大学生。  少しは自分の将来にも目を向けてほしいものだ。  食器を流しに入れ、水に浸ける。  自分が食べる朝食を作ろうと冷蔵庫を開けるが、中には朝に食べれるようなものはなかった。  まさか、ここまで食べるものが無いとは思っていなかった。 「滉雅のやつにパンとか食わせちまったしな」  何もないなら仕方がないと思い、食材を調達するために自室へ行き身支度をする。リビングへ戻り、買い物袋と家の鍵を持つ。  自転車で行こうと思い、鍵を探したが何処にも見つからず諦めた。  リビングにかけてある時計を確認。時間は八時三十分を過ぎていた。滉雅のことを気にしていたら、かなり時間が経っていた。  近くのスーパーは早い時間からやっているため、本当に有り難く思う。  食材を腐らせて捨てることが、あまりにも勿体なく感じて買いだめはしていない。  そのせいもあってか、すぐに家にある食材は底が尽きる。  その上、滉雅は中学生の時からサッカー部に所属していたこともあり良く食べる。  大学生になった今でもサークルでサッカーをしている。  体を動かすことは悪くない。  だから辞めろとも言わないが、食べる量が増えているのは確か。  そう考えると、またため息を吐いた。今日で何度目のため息だろうか。  俺は考えるのを止め、玄関に置いてある自分の靴に足を通し扉を開けた。  そして、外へ一歩踏み出した。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!