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俺は落ちていた滉雅の鞄を拾い上げ、滉雅に渡そうと差し出す。
朝食を食べ終えた滉雅は鞄をひったくるように取り、玄関の方へ走って行った。
ため息を吐き、滉雅が食べて空になった食器を片す。
平日でも毎朝このようなやり取りをしているせいか、疲れが溜まってくる。
仕事より滉雅の世話の方が疲れるというのは、どうしてなのか疑問に思う。
俺の仕事はプログラマー。
家でできる仕事のため、出勤するために外へ出ることは殆ど無い。
外に出るとしたら食材やらを買いに出かけるぐらいのものだ。
母と父とは離れて暮らしている。俺達の実家は田舎で、畑や田んぼがあるようなところだった。
俺は高校生の時に上京、滉雅も中学生になると同時に俺に預けられた。
俺は滉雅が高校生になる頃には、二十歳は過ぎていた。
その時は俺もまだ就職して間もない頃だったこともあり、滉雅を養えるほどの余裕はなかった。
今では十二分過ぎるほど稼ぎがあるせいか最近、滉雅の我儘が酷くなっている気がする。
それに滉雅も今では大学生。
少しは自分の将来にも目を向けてほしいものだ。
食器を流しに入れ、水に浸ける。
自分が食べる朝食を作ろうと冷蔵庫を開けるが、中には朝に食べれるようなものはなかった。
まさか、ここまで食べるものが無いとは思っていなかった。
「滉雅のやつにパンとか食わせちまったしな」
何もないなら仕方がないと思い、食材を調達するために自室へ行き身支度をする。リビングへ戻り、買い物袋と家の鍵を持つ。
自転車で行こうと思い、鍵を探したが何処にも見つからず諦めた。
リビングにかけてある時計を確認。時間は八時三十分を過ぎていた。滉雅のことを気にしていたら、かなり時間が経っていた。
近くのスーパーは早い時間からやっているため、本当に有り難く思う。
食材を腐らせて捨てることが、あまりにも勿体なく感じて買いだめはしていない。
そのせいもあってか、すぐに家にある食材は底が尽きる。
その上、滉雅は中学生の時からサッカー部に所属していたこともあり良く食べる。
大学生になった今でもサークルでサッカーをしている。
体を動かすことは悪くない。
だから辞めろとも言わないが、食べる量が増えているのは確か。
そう考えると、またため息を吐いた。今日で何度目のため息だろうか。
俺は考えるのを止め、玄関に置いてある自分の靴に足を通し扉を開けた。
そして、外へ一歩踏み出した。
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