3話 初めての経験

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 もしかして死んでいるのではないだろうかと思うほどに、全く動かない。  大抵の鳥なら、近づいただけで飛び立ったりするものだが。  俺は鳥が生きているかどうか確認するため近づいた。  羽から流れている血は乾いておらず、新しい傷だということが分かる。  それに胸の辺りが上下しているため、呼吸していることも分かった。  とにかく血を止めなくてはと思い、母イライザから渡されたハンカチを出す。  その時、先ほど聞いた声と同じ声が頭の中に響いた。 『痛い...痛いよ.....』  そして俺は気づいた。この声は、この鳥が発しているものなのだと。  鳥の口の動きに合わせて確かに動いた。  俺の勘違いだと言われればそうかもしれないが、痛いと言っているのに見捨てるわけにもいかない。  とりあえず、鳥を抱え込みハンカチで傷口を出きるだけ優しく押さえる。  この後はどうすべきかと、悩んでいると後ろの方からガイアスが走ってきた。 「どうした!何かあったのか!」  なんだか慌てている様子だが俺は特に何もなっていない。  ガイアスは俺の手元に目を落とすと鳥を見て、ほんの少しだけ目を見開いた。 「ザリウス、それは青い鳥か?」  当たり前なことを真剣な口調で聞かれた。いや、どう見ても青い鳥だが。  そう思いながらもなにも答えないわけにはいかず、とりあえずその言葉に首を縦に振る。 「手を洗おうと来てみたら、近くに倒れていてどうすればいいか分からなかった...」  少し落ち込みぎみに言うと、ガイアスは微笑みかけ俺の頭を撫でた。  もう一度、俺が抱えている鳥を見て口を開いた。 「ザリウス、聞いたことがないか?おとぎ話とかで青い鳥は幸せを運ぶと」  言われてみれば、青い鳥は存在するはずがなかった。  おとぎ話でよく聞いたことがあるだけだ。  俺は納得してガイアス向かって頷き、腕の中にいる青い鳥を見る。  ハンカチで止血したお陰か少し穏やかな顔になった気がした。  俺は安心したのだが、ガイアスはまだ何か気になるようで考え込むように顎に手を置いている。  俺が産まれて6年が経つがやはり知らないことも多くある。  何に対してガイアスが気になっているのか、俺には分からなかった。  ガイアスの顔をじっと見ていると、俺に気がついたのかいつもの優しい笑みを向けて頭を撫でてくれた。
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