プロローグ

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プロローグ

 パンドラの箱…それは、誰もが1度は聞いたことのある言葉だ。  語源はギリシャ神話、パンドラの箱から来ている。  天上の火を盗み、人間に与えたプロメテウスに怒ったゼウスは、人間に恩恵の代償を払わせるべく、ファイストスに粘土で女を作らせた。  その女性は、神々から女性としての魅力や美しい衣装などを授けられ、パンドラと名づけられた。パンドラを下界させる際、「絶対にあけてはならない」という言葉とともに土産として壺(箱)を持たせると、プロメテウスの弟、エピメテウスに与えた。  パンドラの美しさに心奪われたエピメテウス。「気をつけろ」という兄の忠告を忘れ、パンドラと壺を受け取ってしまう。しばらく、パンドラとエピメテウスは幸せに暮らしていた。  ある日、エピメテウスが外出すると、暇を持て余したパンドラは好奇心から壺をあけてしまう。中からは、病気、憎しみ、妬み、嫉妬…あらゆる災いが黒い霧とともに飛び出し、四方に散った。  恐ろしさから急いで蓋をしめたものの、後悔に襲われ、パンドラは涙を流した。ちょうど帰ってきたエピメテウスが泣いている理由を聞くが顔を覆って泣くだけ。すると、壺の中から「蓋をあけてください。私は希望です」という優しい声が聞こえてきた。恐る恐る、エピメテウスが蓋をあけると、希望の女神が現れ、空へと舞いあがった。そして、エピメテウスとパンドラは、ほのかに明るい光に包まれたのだ。  この話は現代の我々とよく類似した部分がある。  我々、人間は好奇心の塊だ。細長い箱の中には知りたい情報が詰まっていて、指をスライドさせれば、すぐに知ることができる。しかし、中には知りたくないものや見られたくないもの、根も葉もない噂も入っている。特に、不倫、引退報道、解散報道、プライベート…。真実のものもあるが、憶測や人の不安をあおるような記事のほうが多い。  人間、生きていれば隠し事の1つや2つある。見せなくてもいいプライベートを芸能人が必死でパンドラの箱に隠しているのに、好奇心を持った者達があけてしまうのだ。飛び出してしまったプライベートは、ファンの元へ飛びだし、傷つける。傷ついた人は「裏切られた」と批判し、相手を罵倒する。関係ない人は拡散し、面白がる。そんな姿を見て、パンドラの箱をあけられた芸能人は、悲しむのだ。  そんなパンドラの箱をあけられた芸能人を私は知っている。名前は、TAKU。彼もまた、悲しんだ1人だった。
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