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矢田くんが「それってどういう意味?」と困惑した声を上げるが、私は優雅に笑って「授業が始まるよ?」と席に座るように促す。
その時ちょうど先生も来たので、優等生な矢田くんからの追及は後回しにしたようだ。先生、グッジョブ!
そのまま流れで「起立、礼、着席」をしてから、授業が開始された。先生が教科書を確認して、黒板に今日の単元を書きはじめる。そのことを確認した私はスマートに後ろを向いて、椅子に乗り上げて矢田くんの方へ身を乗り出す。
そして、ノートを広げて下を向いている矢田くんの耳元で、そっと囁く。
「一緒にジェットコースターに乗ろうね、矢田くん」
さて、矢田くんはどんな表情をするだろうか。驚く? 照れる? それとも怒る?
ちゃんと見て矢田くんの表情を確かめたいが、先生に見咎められるのも嫌だ。それに、何より「正解」を見てしまっては面白くない。きちんと解く工程を楽しまないと。
私は矢田くんが顔をあげるより早く前を向いて姿勢を正し、何事もなかったかのように先生の方を向く。
ーーああ、授業が終わった後にちゃんと答えを聞こう。
私は鼻歌を歌い出しそうになる口元を押さえて、先生の声に耳を傾けるのだった。
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