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その音が終わると同時に室長の掛け声に合わせて「起立、礼」をしたら、「課題を学校に忘れたりするんじゃないぞー」と言う先生からのありがたいお言葉を受け取って完全に授業が終わった。
休み時間となりざわつき始めた教室を眺めた私は、息を吐くと同時に心の声を呟いた。
「あーあ、飛び降りたい」
「え、自殺願望があったの?」
雑音にかき消されるくらいの小さな声を拾ったのか、後ろからなんの前触れもなく声をかけられる。そう、存在感の前触れもなく。
「うわっ、矢田くんだ。いつも急に出てこないでっていつも言ってるじゃん」
「だから、いつも急じゃないって言ってるじゃん。後ろの席にずっといるし」
「ああ、そうだったわ。存在感なさすぎて毎回忘れる」
「そうやって毎回僕の心の傷をえぐってくるところ、一周回って好きになりそうだよ」
「矢田くんってMなの?」
何度か話しても朗らかに笑っている印象しか残らない、可哀想なくらい影の薄い矢田くん。彼の存在を認識できる日はいつのことだろうか。
また、彼の存在をみんなが認識できる日はやって来るのだろうか。想像できない。
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