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矢田くんと話すきっかけになった「クラスのライングループ」の件は、私の中では伝説となっている。
矢田くんを招待してクラス全員参加のグループができた。クラスの中心人物が「やっとみんな揃ったなー」とか言っていたが、今回は「矢田って居たっけ? 矢野は居た気がする」とか言うことを各々の仲良しグループラインで確認作業が行われたらしい。
それから「矢田」と言う人物がクラスにいることはみんな分かったみたいだが、誰が矢田くんなのかはみんな認知できていないのが現状だ。本当にどれだけ影が薄ければこうなることやら。矢田くん、あはわなり。
「さっきさ、飛び降りたいって言ってたけど飛び降り自殺でもするの?」
「しないよー? するように思えた?」
「そう言うのとは無縁そうだけど、流石に目の前で飛び降りたいって言われたら、ね」
矢田くんは気まずそうに目を逸らしながら言うが、彼は相手のことを気にしすぎじゃないか? そんなんだから影が薄いんだろう、なんて失礼なことを考えてしまうよ。そんな訳ないのに。
「いや、アクション映画とかみたいに二階からカッコよく飛び降りて着地してみたい」
「あ、そっち」
矢田くんはほっとした様子で胸を押さえるが、何を勘違いしたらそうなるのだろうか。まあ、私を心配してくれたことは嬉しいけれどね。
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