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私がイヤホンをつけたことを確認した矢田くんは、動画の再生スイッチを押した。
動画は十分少々のものだったが、興味のある内容だったのであっという間の時間であった。元自衛隊の人が実践してやっていたが、流れるように衝撃を逃すように体をひねる姿は私の目に優雅に映った。
私も二階からあんな流れで飛び降りてああすればいいのか、と理解出来た。
「よし、じゃあちょっと飛び降りてくる」
「待て待て! そこは止めろよ! 無理だと悟ろうよ!!」
席から立ち上がったところを矢田くんに腕を掴まれてしまう。意外にも大きな矢田くんの掌で掴まれ、私の腕から電磁信号が伝達されて反射的に動きを止めた。
私の顔を見て何を思ったのか、矢田くんは顔を赤らめて「ご、ごめん。急に腕を掴んじゃって」と言って手を離してくれた。おい、私より反応が乙女じゃないか?
掴まれた手を見て、「矢野くんも男の子なんだなー」と改めて実感しただけの私じゃ到底勝てないわ。
「でも、やってみたいの」
捨てられた子犬を意識して目をうるうるさせ、蹲み込んであざとい上目遣いで矢野くんにお願いしてみる。矢野くんは顔を赤らめたまま「いや、でも危ないし」と目を空に彷徨わせる。
私の思ったような反応を見れて、私の頬は緩みに緩む。
「それに村田さん、運動神経良くないでしょ? 体育の成績は」
「2でした」
「うん、欠席をしてないのにその成績は・・・あれだよね」
「うん、運動音痴でした。自分」
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