第2話 葬儀

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第2話 葬儀

 夕方珍しく五条家の当主、(かおる)から電話があった。五条は日本を代表する大手企業だ。五条グループの総帥である薫は多忙であった。彼は一年の殆んどを海外で過ごす。  薫の用件は、葬式の代理出席の依頼であった。 家柄では格上となる名門の鷹司家の(あるじ)が亡くなったと言う。ドバイにいる薫が葬式に顔を出すのは不可能であった。その為葬儀参列者の代理を立てねばならなかった。  本来なら妻の未央(みお)がその役を果たすのだが、うつ病を患っている彼女には荷が重すぎる。  彼はその役を息子の(よう)と甥の(あおい)に託した。彼らは今年高校生になったばかりであるが、もはや立派な実業家でもあった。彼らの知識や経験は大人を凌駕している。五条家の代表として申し分なかった。  五条家の執事の田所は手早く身支度を整えて碧と耀に向かって言った。 「お二人とも明日は朝が早うございます。朝一番の新幹線で京都に行きます。東京からでは到着まで少々お時間がかかりますので、今日はお早めにお休み下さい」 「そうですね。早めに休みます。」碧が答えた。 「鷹司の娘の名前何だったっけな。」燿が言った。 「(みやび)。」碧が答える。 「そう、それだ。マジ嫌味なババアでさぁ。あいつの顔なんて見たくもないぜ。」 「評判の悪い人だからね。」 「うちのかーちゃん、あいつにイジメられて鬱になったんだ。」 「理由はそれだけではないと思うけど。」碧が微笑する。 「マジ、陰険でさぁ。あー会いたくないわ。」 「そう言うな。ただ焼香して帰るだけさ。」 「耀様、碧様、ダイニングに。ご夕食の準備が整っております。」執事が言った。田所に促され二人はダイニングルームへと向かった。  翌日、一行は朝一番の新幹線で京都に向かった。通夜はごく親しい者のみに案内されていた。 葬儀は鷹司の屋敷で行われる。会社関係者には後日お別れの会が寺院にて開かれる予定であった。  故人の鷹司 茂一(もいち)の住まいは上京区にあった。葬儀は11時とあったが、時間前に到着した碧達は焼香を済ませて帰ることにした。  もう既に結構な人数が焼香に出向いていた。受付には葬儀社の者が対応していた。親族は会場には居なかった。    その時に焼香を済ませて屋敷を出る時に一行に声を掛ける者がいた。  「すみません。五条家の方でしょうか?」  「そうですが。」田所が答えた。  「私は家政婦の中野と申します。」  中野は60代後半くらいの女性で中肉中背であった。    田所が怪訝な顔をした。碧はそれを見逃さなかった。  「長女の雅様が碧様にお尋ねしたいことがあるとのことです。こちらに来ていただけないでしょうか?」  「この度はお悔やみ申し上げます。」田所が言った。  「ありがとうございます。」  「して、何故に雅様が碧様に用なのですか?」  「さぁ。私は理由は存じません。ただお呼びしてと申し付けられまして。」  「左様ですか。わかりました。参りましょう。」 田所が答えた。  一行は中野の案内で鷹司の屋敷に入って行った。
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