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「ねぇ幽霊」
「はい志麻さん、何でしょう」
翌朝、玄関で仕事用のパンプスを履きながら、志麻さんが話しかけてきました。
どうやら姿は見えずとも、会話が可能に成ってしまったようですよ。
「私が仕事に行っている日中は、一人で居るのよね」
「そうですね。木本さんのお宅の幽霊さん達と、井戸端会議をする以外は一人です」
志麻さん志麻さん、ご出勤前だというのに、またもやお顔が引きつってますよ。(皆さん血みどろの骸骨より、ずっとまともな姿をしておられるのに)
「隣の幽霊ってまだ居るの」
「ええ、木本さんの恐怖心に支えられ、皆さんご壮健ですよ」
「一体何なんだろうね・・・」
「まあ、それぞれに事情があるようですよ」
「ふぅん。まあ良いや、時間ないし。ねぇ幽霊、今度幼馴染のお姉さんに会いに行こうね」
「はい?」
「帰ってきたらちゃんと話すね。幽霊が昼間一人ぼっちに成らない様に、ちょっと紹介したい人が居るんだ」
「なるほど、わかりました。ではお帰りに成ってから詳しくお聞かせくださいね」
「うん。じゃあ、行ってきます」
志麻さんは玄関扉を開ける前に必ず手を振って、お出かけ前の挨拶をしてくださいます。
「はい、行っていらっしゃいませ」
僕も両手を肘から曲げて胸元で振り返し、志麻さんの一日の検討と無事を祈るのでした。
後日志麻さんの提案で、幼馴染のお姉さんにお会いしたことは、また別のお話ということで。
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