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こんばんは、幽霊です。
ええ、血みどろの骸骨です。
日中にお読みになる方もいらっしゃるのでしょうけれど、ここは雰囲気ということで、「こんばんは」でご了承ください。
世間では幽霊というものについて些か誤解があるようで、死んた人間が幽霊に成るというのが通説です。
ですが実際のところ、幽霊を作り出すのは生きている人達の恐怖心です。
生きている人が「あの人は人を憎んで死んだ」とか、「死んでも死にきれないだろう」とか、その様な不安な気持ちから来る恐怖心が幽霊を作り出すのです。
本物の幽霊といたしましては誤解を解きたいと思いつつ、なかなか機会がないのが現状。
ところが僕は幸いにして日比野 志麻さんという、可愛らしいお嬢さんと運命的な出会いをし、幽霊という現象についてお話をする機会ができたのです
このお話はそんな僕と志麻さんの、心生暖かい生活について綴った物語です。
はてさて、そろそろ秋も深まりスパーにおでん種がコーナー化される頃、志麻さんが言いました。
「ねぇ幽霊、あなたちっとも死なないわね?」
ほかほかと湯気の上がる丼向こうで餅巾着を食む志麻さんと向かい合い、唐突な質問に応えねばと空っぽの頭蓋骨に脳みそを思い浮かべて考えます。(毎回思うのですが、レアステーキよりも血の滴る骸骨の前で食事って、普通はあり得ませんよね?)
「といあえず、幽霊なので死にません。ご質問の内容はどうして消えないのかで宜しいですか?」
「おお!」と呟く志麻さんを確認し、消えない理由を説明します。
「志麻さんは僕が夏が終われば消えると聞いて、思い出作りをしようと提案してくださったじゃないですか。実際にテーマパークやプールに行きましたし、夏の終わりを二人で楽しみましたよね」
お行儀悪く箸先を僕に向け「それっ!それっ!!」と叫ぶ志麻さん。
「消えちゃうって云うから、居なくなる前に思いで作ろうってお出掛けしたのに、消えないから!!不思議に思うじゃない?」
小首を傾げる仕草、相変わらず可愛らしいお嬢さんです。
可愛らしいのでちょこっと意地悪をして脅かしてみましょう。肝試しの幽霊ですし。
「居なく成ったほうが宜しいですか?取り敢えず今は消えそうにありませんし、何処かへ去りましょうか」
「駄目!絶対駄目!!幽霊はここに居るの!!!そんな姿で彷徨ったら、また誰かが吃驚するじゃないのー」
「そこなんですよ」
「へ?」
状況が分かっていない志麻さんは、一旦箸を置いて座り直します。
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