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窓の外から雨音が聞こえてきます。
今夜は本当に冷え込みそうですね。
そして志麻さんは、雨音に合わせシトシトと涙を流しています。
とても優しくて感情豊かな人なので、会ったことのない菊さん達を思い、その儚さに涙を流して下さるのでしょう。
「ねぇ幽霊」
「はい」
「幽霊が、消えなかったのは、そうやって目撃されて、怖がられて、霊力を補強、されたからなの?」
ポツポツとつっかえながら聞いてくる志麻さんは、いつの間にやら正解にたどり着いていたようです。
「そうです。本当は誰かを怖がらせたりしないで、消えてゆくほうが良いと思っていました。けれど志麻さんとお出掛けしたく成ってしまって、それで消え損ねてしまったんです」
「でも、私は幽霊と思い出作りしてよかったと思うよ。幽霊の居ない生活に戻りたくない。毎日行ってらっしゃいって、おかえりなさいって言って貰えることが、こんなに良いもんだなんて知らなかった。家事とか何も出来なくていい、ただ、待っていてくれて、話を聞いてくれるだけでいい。幽霊の居ない部屋になんか戻ってきたくない」
「有り難う御座います。大丈夫ですよ、当分消えそうにありませんから。むしろ、罪悪感が・・・・」
「罪悪感?驚かしちゃったから?」
グスリと鼻を啜る志麻さんは、ティシューを箱から引き出しながら聞いてきます。
「驚かれただけならば問題ないんです。僕が消えずに補強されてしまうほどの恐怖を、複数人に与えてしまったことが問題でして。テーマパークやプールに変な噂が立ってたらどうしましょうかと」
「へ、変な噂!それって」
「お菊さんの大量発生的な・・・」
「・・・・・、大変だぁ!!」
志麻さんがお膳を引き寄せパソコンを起動し検索すると、ネットの海には某テイマパークと某プールに、血みどろの骸骨が出没するとの心霊スポット情報がヒットしました。
嗚呼、やはり噂に成ってますよねぇ。血みどろの骸骨なんて、幽霊としてレアキャラですからね。
なんて考えていると、
「プールの方が大変みたい。女子更衣室の着替え用個室を、骸骨が上から覗いてくるって書かれてるよ~」
と嘆く志麻さん。
「あー、それ僕ではないですよね。女子更衣室には入っていませんし、僕が覗き込んだら血が滴ってしまいます。書かれた時期も9月の半ばですよ。噂が噂を呼んで新しい幽霊が出ちゃいましたね・・・」
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