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「あの、さ」
一晩考えて、これだけは言わなければと思ったこと。
「ペアの指輪は……さ。変に将来を意識し過ぎて、俺が挙動不審になりそう……。だから、今回はごめん……」
桜子が俺が回した腕に手を添えてきた。
(情けなくて、ごめん……)
俺はぎゅっと桜子を抱きしめた。
そのうち、桜子がくすくすと笑い出した。
「……何?」
「ごめんごめん。なんか挙動不審になってる智明くんを想像したら……」
桜子は肩を震わせながら笑っている。
「私といる時ずっと、智明くんがそんなだったら、私が『重っ……』って思っちゃいそう……」
笑い過ぎたのか指で目に溜まった涙を拭いながら、桜子が俺の方に振り向いた。
「私が欲しいのは、智明くんとのお揃いの物。今回いいなって思ったのが、たまたま指輪だったから話がややこしくなっちゃったね。ごめんね」
俺は、はあー……と息をつきながら、桜子の肩に顔を埋めた。
「よかった……。まじで別れ話切り出されたらどうしようって心配した……」
「私だって、昨日逃げるように帰っちゃったから、嫌われたらどうしようって心配だったよ……」
「桜子……」
俺は顔を上げて、桜子を見つめた。
そして彼女の頭の後ろに手を添えて顔を近づけた。桜子がそっと目を閉じる。
俺も目を閉じてーーー。
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