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「だって、ペアのアクセサリーって指輪なんだよ? そういうの欲しいって言う彼女、重くない?」
桜子は顔を背けたまま言った。
「私も今年30歳で、親や周りからは結婚はどう? って聞かれるようになって……。私はまだ結婚とかあんまり意識してないよ? でも私が指輪が欲しいって言ったら、智明くんがどう思うか怖くて……」
ペアの指輪……? 結婚……?
……いやまあ、結婚については漠然と考えたりしている。
考えていないことは無い。
ん? 結婚のことを考えてほしいって言われた?
……いやいや。あんまり意識してないと桜子は言った。
頭の中がちょっとしたパニックになった。
「予約が取れなかったら話す必要ないし、もし予約取れたら話そうと思ってて……。それで智明くんが嫌がったら、キャンセルすれば他の人が予約するだろうし……」
……ちょっと待て、そんなことより。今俺は、桜子の浮気を疑ってしまったじゃないか!
俺は桜子に何かを言わなければと思った。
「桜子……。俺、ごめん。あの……」
でも、考えがまとまらないうちに桜子が立ち上がった。
「ごめん。今日はもう帰る」
そう言うと俺からスマホを奪い取るようにして自分のバッグに入れ、俺の返事も待たずに部屋から出ていった。
俺は桜子を追いかけることもできず、頭を抱えることしかできなかった。
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