放課後と生徒会室

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「あれは入学式の日の出来事です」 神宮寺先輩がにこやかに話し始める。 「私はあの時非常に疲れていたんです。周りからの期待、何より生徒会長はこの我儘野郎ですし…」 「おい」 「入学式でお祝いの言葉として生徒会長の涼宮が話す予定だったのに、直前で面倒とすっぽかしやがったんです。そのせいで私はバタバタするはめになり、代わりに言葉を読んだり他の生徒会の役員と話して役割を分割したり……」 神宮寺先輩、苦労してんだなぁ…。ていうか生徒会長のくせに仕事サボるなよ。俺がちろりと涼宮を見ると涼宮は後ろめたそうに目を逸らした。 「そして、です。新入生は迷子になる人が多いですから、私たち生徒会は校内の見回りを行っていました。そこで迷子になっていたのが…夏澄さん、貴方だったんですよ」 「へぇ…?」 迷子になって案内した時に仲良くなったとか?俺はそう頭に想像しつつ話を聞く。 「貴方を一目見た時ついに過労で天使がお迎えに来たのかと思いましたよ」 「はい?」 その表現はおかしいだろ。 「思いましたが、私は人に感情を見せるのが好きではなかったので表面上では微笑んだくらいでした。そしてとても疲れていました。頑張って笑顔を作っていましたが具体的に言うなら今すぐ寮の自室に帰って眠りたいと、それくらい疲れていました。 すると、夏澄さんが私の目を見て『疲れてるみたいだけど大丈夫ですか?作り笑いすると余計疲れちゃいますよ』と…」 神宮寺先輩はその時を思い出したのか、楽しそうに笑った。 「私は驚きました。今まで私の周りで私が疲れていることや作り笑いしている事に気づいた人はいませんでしたから…ですがそれは私がいつも完璧な振る舞いをしていたからです。まさか初対面の貴方に気付かれるとは思わなくて………だからその時思ったんです。 この人が私の運命の人だと」
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