新しい出会い

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「俺がカスミと会ったのは入学式の日だよ。俺はその日上級生に喧嘩売られて……大暴れしたんだ」 ……病院送りにしたのは本当だったのか。 「返り血が制服についてたけど気にするのも面倒くさくてそのまま寮に行ったんだ。そしたらカスミがいて、俺を見るなりこの血はどうしたんだ怪我でもしたのかって大慌てで」 それを思い出したのか、へにゃ、と笑う。 「でも俺…その時は同室と仲良くする気がなかったから。ほっとけってカスミの事…突き飛ばしたんだ。…ほんとにごめん」 しゅん、とまた眉を下げる蓮。 「そしたらカスミ、俺に向かってほっとけるわけないだろって怒ったんだ。…俺、昔から体もでかくて生意気な顔してるからしょっちゅう絡まれて、絡まれて喧嘩してるうちに皆から怖がられて…。だから俺に怒るやつなんていなかったし近寄ってくる奴もいなかったんだ。 俺は中学時代から有名だったし、カスミも俺の事知ってたのに心配だからって俺に怒ってくれた。俺の目を見て事情を聞いてくれてやりすぎだって叱ってこんな事するなって」 ……事故前の俺勇者すぎるな。 「でも1人病院送りにしたのが学校にもバレたから謹慎処分になるってなった時、俺が全部悪いみたいになって。どうせ大人は信じてくれないって全部諦めてたのにカスミが先生たちに『レンは確かにやりすぎたけど最初に喧嘩を売ってきたのはあっちだ、大人数で1人を囲んだのは相手だ』って抗議してくれた。 …俺、それが嬉しくて。親が圧力かけたのもあると思うけど、カスミの話で謹慎の日にちの見直しあったみたいだし。 でもカスミが事故にあって帰ってこなくなって俺……」 そこまでいうと、目に涙を貯めている蓮が見えた。 「お、おい…大丈夫か?」 「俺怖かったんだ。俺の目を真っ直ぐ見て俺を信じて俺のために怒ってくれる人が現れたのに、一瞬でいなくなって、もう帰ってこないんじゃって……」 そう聞いた時、今まで蓮は寂しくて暴れていたんだと俺は思った。理解してくれる人が周りにいなくて、他に熱中出来るものもなくて、それでよくない方向にエネルギーを発散してしまったんだな。 「大丈夫だよ。俺もういなくならないし、なんなら3年間ずっと同じ部屋だしな」 俺が笑ってみせると蓮も情けない顔でふにゃっと笑った。 「…カスミ、大好き」 真っ直ぐなその言葉に、それは記憶を無くした俺が言われていい言葉なんだろうかとか、今の状況の照れくささとかたった1日2日しか一緒にいなかったのにここまで好かれるなんて凄いな、なんて全部合わせて複雑な気分になったけど。 頭をそっと撫でた。蓮は気持ちよさそうな顔をして、俺の手に擦り寄る。 「ふふ、犬みたいだな蓮」 「カスミがそう思うなら俺犬でもいいよ?カスミ専用の犬だけど」 わん、と犬の鳴き真似をする蓮に思わず吹き出す。なんだ、同室上手くやっていけそうじゃん。 それにしても事故前の俺、たった2日間でどんだけ色んなやつに絡んだり怒ったりして事故ってったんだよと俺は少し頭を抱えた。 叱ったりとかで気に入られるなんて、金持ち連中の周りの親衛隊はキャーキャーチヤホヤしてるけど、叱った方が気に入られるんじゃないか?ってそう思うくらいだ。
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