新しい出会い

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次の日、俺は朝から蓮と軽く揉めていた。 「なんでだよ?蓮のクラス俺のクラスと離れてるじゃん。」 「…そうだけど、だけどぜったいにカスミをクラスまで送る」 子供のようにぶすくれた蓮が、朝から俺をクラスに送り届けると言って聞かない。蓮のクラスは聞けば俺のクラスと真反対位のところにある。 校舎も広く、人数も多いこの学園で真反対にあるクラスというのは片道で少なくても5分はかかるだろう。 それなのにわざわざ俺のクラスまで俺を送るなんて時間がもったいないと思う。 説得しようと思ったが、あまりにも子供みたいな顔で頬を膨らませるのでその姿が可愛くて思わず笑ってしまう。 「分かったよ、物好きなやつだな〜」 「カスミ専用の犬だからちゃんと警備する」 「はは、何それ!」 意味のわからない事をいう蓮を連れて俺は部屋を出た。…まさかあんな事になるとは思わず。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 教室に着くまで凄い通りすがりの生徒たちにジロジロ見られた。蓮が目立つから仕方ないけど、だれこれ構わず睨みつけるので途中叱ったりして。頭を軽く叩いて睨むなって叱ったら、蓮はしゅんとしてごめんなさいって言ってて全然危なくなんかないのに、周りからはどよめきがあがったり。 失礼な奴らだ、そんな腫れ物扱いするから蓮が寂しがりになるんだぞ。 そう思いつつ自分の教室の前にくると、教室には人だかりができていた。 …なんだ?何かあっているのか? 男子校なのに黄色い悲鳴が上がって耳が破けそう。蓮も顔を顰めている。 教室の入口で固まっていた人混みは、蓮を見た途端ぎょっとして避けるように道を作る。どんだけ怖がられてるんだ蓮は。 「ほらついたぞ。警備は終わった?」 「…ううん。時間ギリギリまでカスミと一緒にいる。」 「はいはい」 俺を後ろからぎゅっと抱きしめてくる蓮を引き連れて俺は教室の中に入った。 ── 目が合った。 「…涼宮先輩に神宮寺先輩…。こんな所で何してるんですか?」 教室の中には生徒会長と副会長がいて、どっかりと俺の席の周りに座っている。俺を見て一瞬で笑顔になったけど、後ろにくっついている蓮をみて眉間にシワを寄せた。 「おい、なんでそいつがいるんだ」 涼宮が不機嫌そうに蓮を指で指す。 「なんでって、同室ですもん」 俺がそう言うと驚いたような顔をした後にため息を着く涼宮。神宮寺先輩は俺からすれば笑顔を浮かべている。 「…お前の同室変える」 「…はぁ?やったら殺すからな」 涼宮の言葉に俺の前ではふにゃふにゃしてた蓮がピリピリと殺意を醸し出して涼宮を睨んだ。俺と話す時よりずっと声も低くて、確かにこれだと怖がられるかもっていうくらい。 「こら、殺すとか言っちゃダメだろ?」 「だって…コイツが…俺カスミと一緒の部屋じゃないとヤダ。」 泣きそうな顔で俺を見る。 遠巻きに俺たちを見ている周りの生徒達がザワザワするくらい、蓮のこういう態度は珍しいらしい。 「涼宮先輩も変なこと言わないでください。俺は蓮との同室変わる気ないですよ」 俺の言葉にぱっと笑顔になる蓮と、余計不機嫌になる涼宮。 「夏澄、お前いつの間にそんな猛獣手懐けたんだよ」 「はぁ、知らないですけど…。俺が事故る前に仲良くなったみたいです。それに蓮は猛獣じゃないですよ。確かに喧嘩してたみたいだけど俺がするなって言ったらもう喧嘩しないって言ってたし。な?蓮」 俺がそういって頭を撫でてやると、蓮は気持ちよさげに目を細めた。本当に蓮はわんこみたいで可愛い。周りが怖い怖いと言うのが理解出来ないくらいだ。 「うん、俺カスミがやるなっていうならもう喧嘩しない」 「ほらいい奴じゃないですか」 「…………思っていた以上に敵は多いみたいですね」 神宮寺先輩が人前だからか笑顔はくずさず小さな声で呟いた。…敵?
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