新しい出会い

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……やっちまった…!!!!! 穴があれば入りたい。1年生である俺が校内で有名人の生徒会長と副会長、蓮と一緒にいるだけでも無駄に目立つのに、その蓮を従えているような雰囲気で副会長を大きめの声で叱るって…。 やばい、本当に恥ずかしい。 そもそも入学2日目で事故って記憶喪失ってだけで割と目立つのにこんな事でまた目立ってしまうとは。 記憶喪失になって強がってはいたけど大分不安要素が大きいのに、こんなに目立って副会長に生意気な口聞いたから親衛隊からも睨まれるだろうし俺これからやっていけるのだろうか…。 顔がどんどん熱くなってくるのがわかる。 そう思っていると、蓮が俺の腕を引いて俺を抱きしめた。 「カスミ、そんな可愛い顔してたら皆カスミのこと好きになっちゃう。俺の前以外で可愛い顔しちゃイヤだ」 ……はい? むしろ今俺は嫌われた方だと思うんだけど…。レンは俺の事を買い被りすぎている節があるな…。それに可愛い顔って、俺が恥ずかしくて情けない顔をしているのの何が可愛いんだ。 言われている意味は分からないが蓮は俺の顔を人に見せないようにぎゅう、と俺を腕の中に閉じ込めている。 「おいいつまで抱きしめてんだよ」 圧倒的に不機嫌な涼宮の声が聞こえ、襟を掴まれて俺は引き剥がされた。…人を物みたいに捕まえないで欲しい。 「……カスミが喧嘩するなって言うから殴らないでいてやってんだけどわかんねぇの?」 「は?…やるのかよ」 バチバチと次は蓮と涼宮が火花を散らしている。…はぁ。朝っぱらから頭が痛い…。 「あの〜、皆さんそろそろHR始まりますよ」 その時、横から声がして。ぱっと横を見ると幸ちゃんが勇気を出したように時計を指さしていた。幸ちゃん…!!!!!流石俺の女神、助け舟を出してくれたみたいだ。 それを聞いた涼宮は、蓮に向かって舌打ちをしたが「夏澄、放課後絶対来いよ」と俺に行って神宮寺先輩と教室を出ていった。出ていく時にも親衛隊がキャーキャー騒いでいたが2人とも意にも介していないようで、慣れってすごいなと思う。 「蓮、ほらそろそろいかないと間に合わないぞ」 「…なんで俺カスミとおんなじクラスじゃないの」 蓮はぶすくれた顔で俺をまたぎゅっと抱きしめて、名残惜しそうに手を振って教室を後にした。 親衛隊達が遠巻きに、「なんでアイツ涼宮様だけじゃなくて神宮寺様まで」とか「なんなの!特別気取り?」とか「涼宮様と神宮寺様に向かって何あの口の利き方!」とか「さっきの上矢蓮だよね?なんであんなに大人しいの?」とか、ガヤガヤと俺に関する悪口やらレンの態度に対しての噂話やらをしているのが聞こえてくる。 ……俺は巻き込まれてるだけなのに…。 こんな事で悪口言われるなんてこの学校おかしい。なんで俺はこの学園に入学したんだろう? 「…夏澄くん、なんか益々フラグたってない?」 「言わないで幸ちゃん…事故前の俺が悪いんだ…」 これからの学園生活に思いを馳せながら、俺は深いため息をついた。
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