新しい出会い

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俺の非力な抵抗も虚しく、ぷつぷつとシャツのボタンが外されていき肌が外気に触れる。ベタベタと男たちの手が俺の体に触れるのがわかり、ビクッと体が震えた。 こういう時にどう対処していいのか分からない。記憶が消えてぼーっとしていたのもあるが、男同士でそういう行為をする奴がいると聞いても自分が襲われるなんてことないと心のどこかで思っていた。 「色白いね、綺麗な体してる」 「ホントに処女なんじゃね?慣れてなさそうな顔しちゃって。」 「腰細いな、掴んで腰振る時フィットしそ〜」 男の1人が俺の腰を両手で掴んで腰を振る真似をする。そこまでされればなんの話ししてるのかくらい分かるし、情けないけど気持ち悪すぎて顔を逸らした。 「やめろって!」 「そんな怖がらなくてもいいって。気持ちいいことするだけだしさ」 「先に気持ちよくしてやる?」 「そうだな、1回イっちゃえばやる気になるよ夏澄ちゃんも」 ヘラヘラと笑う男の手が俺のズボンのベルトにかかった。……勘弁してくれ。今すぐ誰でもいい、涼宮でも神宮寺先輩でも蓮でもいいから助けに来てくれないかと必死に祈った。 カチャカチャとベルトを外す手つきに、俺は思わず目をつぶる。 「何してるの?」 その時、落ち着いた声が廊下に響く。 ハッとして涙が出かけた目を開けると、廊下に1人の男の人が立っていた。 茶髪で、酷く整った優しそうな顔をしたその人は、俺を脱がそうとしている男たちをじっと見つめている。 その途端、俺を拘束していた手がぱっと離れ、俺は壁にもたれてずるずると座り込んだ。 「おいっやべぇって!」 「まだ何もしてませんから」 「に、逃げようぜ」 男達は口々に言い訳の言葉を放ち、バタバタと急いで走り去っていく。 嵐のような出来事にポカンとしていると、優しそうな顔をした人は近づいてきて俺の前にしゃがみこんだ。そして、脱がされかけていたシャツのボタンを1つずつ丁寧に止め直してくれる。俺も慌ててズボンのベルトを締め直した。 「大丈夫?怖かったでしょ」 ぽん、と優しく俺の頭を撫でる手に急に安心して思わず涙がぼろっとこぼれ落ちた。 「こっ、怖かった……です……」 「うん…ほら、あんまり泣いたら目が腫れちゃうよ」 その人は整った顔で優しく微笑むと、ハンカチを俺の目に当ててくれた。 「あのっ…お、お礼を…お名前は…」 俺がそういうと、その人は目を見開いて俺を見つめる。 「俺の事、知らないの?」 ……えっ?
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