新しい出会い

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✱??視点 ……びっくりした。 この学園で、俺の事知らない子がいたんだ。 見たところ1年生っぽいけど…1年でも俺の事知らない子なんていないと思ってた。 廊下で体格のいい男が小さい子を囲んでて、ああまたサカってるのかってげんなりしてた。男同士だとか、そういう事を否定したいわけじゃないけど、無理矢理誰かと繋がろうなんて野蛮なこと俺は嫌いだった。 そいつらは案の定、俺の顔を見て顔を真っ青にして散り散りに去っていって。 残された被害者の子を見れば確かに男に狙われそうな、今まで見たことないくらい綺麗な子が座り込んでいた。 白い肌に、綺麗な栗色の目。スっとした鼻と小さく整ったくちびる。怖い思いをしたせいか微かに震えるそのからだは触ったら無くなってしまいそうなくらい儚くて、目元にうっすら浮かべた涙でさえ男たちの興奮の材料になろう事は明らかだった。 俺の周りにも、親衛隊だとかいって可愛い子は沢山いたけど。この子は可愛いだけじゃなくて綺麗も持ち合わせていて、滅多に居ないような子だとそう思った。 この学園にいて、生徒会のメンバーの名前を知らない子なんていないと思ってたけど、本人は本当に知らないようで目をぱちぱちさせている。 「…あ…、ごめんね。俺は高瀬葵(たかせあおい)だよ。学年は2年」 「高瀬さん!覚えました。俺は橘夏澄って言います。今度絶対お礼しますから」 ……夏澄?どこかで聞いたような。 それにしても名前を聞いても俺の事、分からないんだ…。 ぺこりと頭を下げるその子を思わず引き止める。 「待って、さっきあんな事があったんだから1人じゃ危ないよ。送っていく」 普段こんなこと言わないけど、何故かもう少し話していたくなった。 俺はこの学園にいて、ずっと人の目が嫌だった。元々目立つのも得意ではないのに、どこにいってもじろじろ見られて生徒会なんか入りたくなかったのに家柄と親の言いつけで生徒会に入れられてからは親衛隊なんてものまで出来て。 皆が俺の事を知っている。俺は知らないのに一方的に名前も顔も知られてて、なにかする度に黄色い悲鳴をあげられて正直疲れてしまっていた。 だからこそ俺を知らないという事が嬉しかったのかもしれない。 「…でも…高瀬さんの迷惑になりませんか?」 そうは言いつつもやっぱりさっきの事が恐かったのだろう、手が微かに震えているのが見えた。 「大丈夫だよ。どこに行くの?」 「……生徒会室です」 その言葉に俺は小さく息を飲んだ。
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