新しい出会い

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生徒会室につくと葵さんが生徒会専用の白いカードキーでドアを開けてくれる。 中に入り、見知った涼宮や神宮寺先輩の顔を見ると情けないけどまた安心したのか急に涙が浮かんだ。涙を見せたくなくてゴシゴシと袖で目を拭ったが、いやに勘のいい神宮寺先輩と涼宮に気付かれてしまった。 「おい、何があった?葵何か知っているのか?」 涼宮が涙を拭おうとする俺の手を取り「肌が傷つくからやめろ」と言ってくる。…泣いてるところ見られたくなかったんだけどな。泣くつもりなんて全然なかったのに、急にぶわっと涙って出てくるんだから人間の体は不便だ。 「…俺が言っていいのか分かりません」 葵さんは俺の方を心配するように伺いながらそう言ってくれる。多分、男に襲われかけただなんて事勝手に喋っていいのかと気遣ってくれているんだろう。 言う必要もないだろうと思ってたけどこんな風に泣いて心配かけといてその理由を教えられない、じゃあまりにも先輩たちに悪い気がして俺はぽつぽつとあった事を話した。 「── くそっ!」 俺の話を聞いた涼宮が苛立たしげに机を叩いた。その音にビクッとすると、神宮寺先輩が俺の頭を撫でる。でもその神宮寺先輩も、いつもの笑顔をどこかに置いてきたように何かに苛立っているようなそんな表情だ。 「葵、その男達に心当たりは?」 神宮寺先輩が葵さんの方を向き直りそう聞くが葵さんは残念そうに頭を横に振った。 「心当たりはありません。外見は黒髪の男は身長170cm程度でつり目短髪。茶髪の男は170cm後半で一重、パーマをかけてました。もう1人は金髪で180cm以上、編み込みをしたロン毛。…ですが、名前も学年も分からないこの状況でこの学園の生徒数の中から絞り出すのは現実的ではないと思います。時間も手間も…」 …す、すごいな葵さん。そんなに細かくあの一瞬で記憶してただなんて…。 「…チッ。前から思ってたがこの学園、学年を絞り込む方法がシャツの袖口のマークだけじゃ分かりづらすぎる。学校側に言ってネクタイの色を学年ごとに変更させる。いいな?」 「そんな事出来るんですか…?」 「実際に被害が出ているんだから出来ないとは言わせねぇよ」 涼宮が凄くかっこよく見える…。今なら心の中でも涼宮先輩と呼んでもいいかもしれない。いや、呼ぼう。涼宮先輩かっこいいぞ…。 まだ出会ってたった数日の俺のためにこんな風に真剣になってくれるなんて、俺ってこの人たちの事を誤解していたかも。 「現実的ではないでしょうね。ですがここで放っておけば生徒会のお気に入りに手を出してもと勘違いされる可能性があります」 神宮寺先輩がくい、と眼鏡を指で治しながらため息をついた。 「夏澄さんをこわがらせたい訳ではありませんが、勘違いされれば生徒会が舐められて夏澄さんに手を出す輩がまた出てくる可能性も」 その言葉に心臓がどくんと脈打つ。 今回は幸いにも葵さんが通りがかってくれたけど、次にもし襲われた時に周りに誰かいるなんて確証はない。 確かに今日体をベタベタ触られはした。したけど、下は触られていないしそれ以上の事もされてはいない。されていなくてこの恐怖と嫌悪感…。 非力な自分じゃ体格のいい男の力に抵抗出来ないことが今日改めて分かってしまったし。
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