新しい出会い

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▧ ▦ ▤ ▥ ▧ 葵さんに部屋まで送り届けてもらった俺は、部屋で蓮から質問攻めにあっていた。 「カスミ、なんで生徒会の奴に送られてきたの?目元赤いけど泣いたの…?泣くようなことあいつらにされたの?」 わんこ蓮、戻ってきてくれ。 そう思うくらいに怖い顔をした蓮は目ざとく俺の赤くなった目に気づいたようで、心配そうながらもぶすくれた顔をしている。 どうしよっかな、気を遣わせたくないし蓮には言わないでおこうと思ってたのに…。でもこのままじゃ変な勘違いをして生徒会に殴り込みに行きかねない気がする。 「嫌生徒会の人達になんかされたわけじゃないって!生徒会室に行く途中で男3人組に絡まれて…」 俺がそこまでいうと、蓮は何かを察したように口を噤んだ。その表情は俺に見せてくれていたような柔らかいものではなく、怒りをはらんでいた。 「ち、ちょっと落ち着いて蓮。俺何もされてない…わけではないけど、未遂だったから!ちょっと体触られただけ。下も触られてないし」 「……カスミを傷付けたやつは誰?」 急いで手を振って否定したけど、怖い顔で遮られる。 「…誰かはわかんない。でも生徒会が探し出すから大丈夫って言ってくれてたけど…」 蓮はそれを聞くと俺を少し見つめたあと急に怖い顔から落ち込んだような顔になり、はぁぁ……と長い溜息をついた。 「ごめんね。俺がちゃんと送っとけばよかったんだ」 「なんで蓮が落ち込むんだよ!責任1ミリもないじゃん」 「…カスミ〜…」 しゅんとした蓮が俺にいつもみたいに抱きつこうとしてピタッと止まる。そして出した腕を引っこめた。俺がはてなをうかべながらそれを見ていると、蓮はもごもごと罰が悪そうに呟いた。 「…ごめん、やだよね?…男に抱きつかれるの」 俺が男に襲われたから、男に触られるの嫌だろうって言う事か。合点がいって蓮を見つめると、しゅんとしていた蓮が更に小さくなったのがわかる。…ふふっ、犬が耳を垂れさせてるみたいで可愛い。落ち込んでる蓮には悪いんだけど。 「蓮ならやじゃないよ。おいで」 俺が手を広げると、蓮はぱあっと表情を明るくさせて勢いよく俺に抱きついた。そのまま腕の中にすっぽりと収められて、ぎゅう、と強く抱きしめられる。 あー…、蓮の匂いってなんか落ち着く。子供体温なのか知らないけどぽかぽかするし。 それにしても不思議だ。あの男3人組に触られた時はほんっっとに気持ち悪くて肌に触られた感覚が残るっていうか、今すぐ風呂に入って洗い流したいような気持ちになったけど。 直に触られていないからっていうのもあるかもしれないが、蓮に抱きしめられても全然嫌じゃないんだよなぁ。むしろ安心するというか、収まりがいい。……身長差感じるのは軽く屈辱なんだけどさ。 ていうか今思えば俺、初日にあの生徒会長にキス奪われてたんだった。あの生徒会長にキスされた時は突然すぎて気持ち悪いとかそういう感覚になる暇すらなかったな。……さっきちょっと良い奴と思ったけどやっぱ訂正しよっかな。 「…なんでだろーなー、蓮に抱きしめられるのは全然気持ち悪くないんだよなー」 俺が蓮に体を預けながら思ったことを呟くと、蓮から何も返事がない。不思議に思ってちらりと上を見ると、蓮が顔を真っ赤にして固まっていた。 「わっ、ど、どうした??顔赤いけど…」 「カスミ〜…それは殺し文句だよ…俺勘違いしそう…」 「勘違い?」 「……いい。分かんないカスミも可愛いから」 蓮はそういって、照れ隠しのようにぐりぐりと俺の肩に頭を押し付けてくる。……可愛いってなんだよ。変な蓮……。
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