新しい出会い

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✱蓮視点 その日、俺はカスミの寝室にいかなかった。 カスミはあの時蓮は気持ち悪くないって言ってくれたけど…。 お風呂を済ませたカスミが立ったままテレビを見ていて、肩をポンと叩いた時だった。カスミが大きく肩を揺らして、明らかに怖がって振り向いたんだ。 大丈夫って言ったけどやっぱり怖いんだと思った。未遂だとか、下は触られてないとかそんな問題じゃない。自分よりデカい男に囲まれて、動けない状態にされて体触られて怖くないわけがない。 ……カスミを抱きしめて寝たかったけど、今日はやめとこう。カスミを怖がらせたくないし…。 ──── コンコン。 「……カスミ?」 カスミと俺の寝室を隔てたドアにノックの音が鳴る。ドアがカチャリと開き、カスミが不安げな顔をのぞかせて俺の部屋に入ってきた。 「どうしたの?なんか気になることあった?」 「…かよ」 「?」 ぼそりとカスミが何かを呟いた。 よく聞こうと耳に神経を集中する。 「…今日は一緒に寝ないのかよ」 「えっ!?」 ドクンと心臓が跳ねた。まさかカスミの方からそんなことを言ってくるとは思わなくて、その言葉に何の意味もないと分かっていてもはしゃぎたくなるくらい嬉しかった。 「………でも、カスミ今日色々あったから。男にくっつかれて寝るのはまだやめといた方がいいと思って…ふとした時に思い出しちゃったりしたら怖くなるかもしれないし…」 俺がそう言うと、カスミがじっと不満気に俺を見つめる。…ジト目のカスミ、かわいい。そんなこと思ってる場合じゃないけど。 「逆」 「逆?」 「……あんな事あったし正直気分悪いから、安心して寝たいんだよ。蓮の傍だったら安心出来るし…嫌かもしれないけど昨日みたいに一緒に寝てくれない?」 …………嫌わけないし。 嫌なわけないけど俺も立派な男なわけで、信用されてるのが嬉しいような複雑なような気分。でもカスミを安心させてあげられるならそれでいっか。 カスミが可愛いことばっかり言ったりするからカスミが帰ってきてから俺の心臓はドキドキしっぱなしだ。 …何より、カスミが俺のそばにいると安心するって言ってくれたことが死ぬほど嬉しくて。今まで喧嘩ばかりで周りから怖がられてた俺にそんなこと言ってくれる人がいるなんて、思わなかったから。 「カスミがいいなら一緒に寝よ。……ううん、俺もカスミと一緒に寝たいし」 「そーだよ、蓮だって人肌ないと寝付き悪いんだろ?えっと、もう一時だしさっさと寝ないと明日起きれなくなるから寝よ?」 恥ずかしくなったのか、少し照れたような表情でカスミはいそいそと俺のベッドに潜り込んで来た。 ころんと横になるカスミが可愛すぎる。…だめだめ、我慢。 俺はそっとカスミを抱きしめて、カスミの背中を優しくポンポンと叩いた。俺の腕の中で小さくなっていたカスミから規則的な寝息が聞こえ始めた頃、俺も瞼を閉じて意識を手放した。
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