親睦会

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抽選で逃げる側を引いた俺と葵さんは、校舎の中を逃げ回っていた。 生徒会で人気のある葵さんに親衛隊は触れたいようで、可愛い子たちが追いかけてきたり、逆に生徒会には関わりたくないという生徒もいるようで葵さんを見た途端に引き返していく鬼もいた。生徒会だからって、全員に好かれているわけじゃないんだなと頭の隅で思う。 「……はぁっ、疲れた…夏澄くん、大丈夫?」 校舎の中でも人気のない旧校舎側に来た俺たちは、ぜぇぜぇと肩で息をする。元々俺は体格も細くて運動神経もいい方じゃないし、葵さんも運動タイプってワケじゃななさそうで、逃げるのが億劫そうだ。 「…はー、はい、俺は大丈夫…です」 正直大丈夫じゃないがそう答える。事故ったからと言って体に問題はないのでただ自分の体力の問題なんだけれど、ずっと走り続けるのって辛い。 「……あの、葵さんはなんで俺を選んでくれたんですか??」 ずっと気になっていた言葉を呟くと、葵さんは少し俯いて「…やっぱり嫌だった?」と聞き返してくる。 「い、嫌な訳ないですよ!葵さんは優しくていい人だし、むしろ俺の方が体力もないから逃げ切れる自信もないしお荷物じゃないかって……」 「そんなこと。そもそも俺、勝ちたいって思っていないから気にしなくていいよ。あんまり捕まりたくはないけど」 ……確かに。このイベントって、デートに誘いたい人がいなかったら別に勝つ必要がない。そもそもなんだこのイベント?誰が考えたんだ。生徒会のメンバーは皆嫌そうな顔をしていたし生徒会考案ではないんだろう。生徒の総意とか? 「…なんで選んだかって話だけど、簡単な事なんだ。………………夏澄くんと一緒にいたくて」 「へっ…………?」 綺麗な顔から紡がれる言葉にドキッと心臓が鳴った。男相手にドキドキするなんてと思うけど、そんなの関係ないくらい葵さんはカッコイイ顔をしてるから、そういう事を言われると勝手に心臓がドキドキしてしまう。 ……いやいや、一緒にいたかったって。…俺この学園に毒されたのかな??そ、そういう意味?でも葵さんに限ってそんな…。 「俺の事をあんまり知らない子と一緒にいたかったんだ」 俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、訂正された言葉に妙にホッとした気持ちになって息を吐き出す。 「そ、そういう事でしたか。俺、記憶喪失で何も知らないから…」 「うん。そんな理由でごめんね…」 「いえいえ、葵さん人から見られたりとかすると苦手って言ってましたもんね」 俺がそう笑いかけると、俺を見て葵さんが安心したように微笑む。そんな顔も抜群にカッコイイわけで……。 葵さんって見た目も相まって凄く王子様っぽい。 「…人の目が苦手になったのに、ちょっとした理由があって…。凄く子供っぽい話になっちゃうんだけど…」 「……?理由、ですか?」 珍しくその先を話そうとしてくれる葵さんの声に耳を傾ける。
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