親睦会

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「──いた!高瀬様〜!!」 少し歩いていれば、バタバタと走る複数の足音と鬼の赤Tを着た可愛い系の子達が追ってきた。目をハートにして、お目当ては葵さんのようで、俺には視線もくれずに走ってくる。 「う、わっ……」 そういって葵さんと走り出す。散々走ったあとに休憩してしまったせいなのか、足が妙に重くて一瞬ふらついたがなんとか持ち直して足を進めた。 葵さんは人気だから仕方ないけど、あんな必死に追われたらそりゃ逃げたくもなるよ。 必死に走っていると、突然葵さんが俺の手を引いた。ガクンと体が揺れたかと思うと、ひとつの教室の中に入っていく。まだ少し足音は遠くて、教室のドアを開けた音が聞こえていないことを願うしかない。 そして、葵さんは俺の手を引いたままその教室にある物入れのような物に入った。 ぎゅうぎゅうに狭い訳では無いけど、広い訳でもないその箱の中で俺は葵さんと向かい合うような形で収まっている。 「あ、葵さ…」 「しっ」 息を小さく整えながら葵さんが人差し指を俺の口に当てる。 そ、そうだ。息を整えないと……せっかく隠れたのにぜぇぜぇ言ってたら見つかってしまう。すぅっと息を吸って小さく吐き出す。深呼吸を何回か繰り返せば、ドクドクと煩かった心臓も少しずつ落ち着きを取り戻してきた。 葵さんは箱の隙間のような箇所から外の様子を伺っている。バタバタと鳴っていた足音は、俺たちを見失ったせいか音を止め周りを探しているようだ。 「あれ!?高瀬様どこいっちゃったのかなぁ?」 「さっきこっちに走っていったのにいないよ」 「── 教室の中に隠れたとか?」 ──── まずい。 心臓がドクンと大きくなった。
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