親睦会

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「やっぱいないよ、他のところ探しに行く?」 「あ、待って。あの用具入れ探してない」 「えーっ、あんなトコに高瀬様が隠れてるわけないよ」 ……まずい、まずすぎる。 話し声とこちらに近づいてくる足音。用具入れ、って明らかにここだよな。そっと隙間から外の様子を伺う。背丈の低い、女の子のような顔をした2人がこちらに歩いてくる。 ドクン、ドクンと心臓が大きく鳴って、この音が外に聞こえてしまうんじゃないかと心配になるくらいで。それはくっついている葵さんからも微かに聞こえていてお互い緊張しているのが分かった。 男子生徒のうちの1人が用具入れを上から下にじっくりと眺め、手を伸ばす。 ── 見つかる! ギュッと目をつぶり葵さんの肩に顔を填めたその時。 「ねぇ、さっき旧校舎の裏から出てった人がいたらしいよ!高瀬様じゃない?」 他のところを探していた生徒なのかは分からないが、その声が教室に響く。用具入れに手を伸ばしていた男の子はその声に手をひっこめ、くるりと振り返った。 「えっ本当!?」 「もーっ、だからそんなとこにいる訳ないじゃんっていっただろ!」 「うるさいなぁ!そんなこと言われても知らねーよ!」 男の子たちは軽く叩き合いながらガラガラと教室のドアを閉め出ていく。 少し時間が経ち静かになった教室の中、一気に緊張の糸が切れ俺は大きく深呼吸をした。 「こ、怖かったぁ〜……まるでホラーゲームをしているみたいな感覚でしたよぉ…」 俺が冷や汗を拭うと、葵さんも苦笑いする。 「俺も緊張した…」 裏から出ていった人って涼先輩と環さんかな。2人のおかげで助かった……。 そう思うと同時に、今の状況が恥ずかしくなる。葵さんは俺を抱きしめ俺も葵さんにくっついているこの体制、凄く恥ずかしい。かぁ、と顔が熱くなるのを感じながら俺はそっと用具入れのドアを開けた。 「す、すみません、俺が不安がってたからって…その…気を使わせてしまって…」 目を見たら余計に恥ずかしくなってしまいそうな気がして、なるべく葵さんの方を見ないようにしながらそう言う。 「…それもあるけど、抱きしめたのは俺が抱きしめたかったからだよ」 横から聞こえてきた思いがけない言葉に、俺は「へっ?」と変な声を出して葵さんの方を見る。
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