親睦会

12/17
前へ
/68ページ
次へ
蓮の顔にほっとして駆け寄ろうとした俺を葵さんが慌てて引き止める。何かと思って蓮を上からゆっくり下に見つめていくと、真っ赤なTシャツが目に入った。 「れ、蓮、お前、鬼……?」 「うん」 にっこりと人懐っこそうな笑顔を浮かべる蓮も、今は鬼にしか見えない。蓮の首にはジャラジャラと沢山の番号札がかかっていて、それが沢山の生徒たちを捕まえてきたという証になっている。 「香澄くん、逃げよう」 葵さんが俺の腕を引いて走り出す。急に走り出した葵さんに蓮が驚いたように少しの間立ち尽くしていて、俺も慌てて後をおった。しかし少し遅れて後ろから蓮が走ってくるスピードが速すぎていつまでも逃げられる気がしない。 「あそこ、角曲がれば校舎に入れるから校舎に入って隠れよう!」 葵さんがそう言うのに必死に走りながらこくこくと頷いた。確かに校舎の中に入ってどこかに隠れれば、まだ逃げられる可能性はあるかも……。どの道このまま走っていて蓮からずっと逃げられるわけないし。 角だ、角を曲がれば──。 俺の前を走っていた葵さんが、角を曲がった瞬間何かにぶつかったように鈍い音と共に尻もちをついた。 「葵さん!?大丈夫ですか?」 俺が駆け寄ろうとすると、角からヌッとまたもやデカい影がでてくる。 「……涼宮先輩」 葵さんが諦めたようにため息をついた先にはドヤ顔で立っている颯斗先輩の姿があった。 ……忘れてた。蓮と颯斗先輩ペアだった……! 蓮の姿しかなかったけどあれは俺たちが逃げる方向を予測して待ち伏せてたんだ……。 颯斗先輩が尻もちをついている葵さんの腕を引っ張り立ち上がらせる。 「葵ィ、捕まえたぜ」 ニヤリと笑うその顔はしてやったりといったようで、葵さんも苦笑いしている。 「カスミ、つかまえたー!」 「おわぁっ!」 後ろから走ってきた蓮に抱きつかれる。グラッとバランスを崩して、そのままごろんと地面に倒れ込んだ。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

500人が本棚に入れています
本棚に追加