有り得ない初日

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食堂に入ると、気持ち悪いくらいに周囲が俺たちをジロジロと見てくる。…なんだよ。何でこんなに注目されてるんだ? ……ハッ!幸ちゃんが可愛いから男に狙われているんだ。 そう思った俺は、幸ちゃんをねらうんじゃねぇぞと周りを睨みつけた。男は皆狼というし、この中に幸ちゃんをねらう不届き者がいるに違いない。俺が睨みつけると何故か周りは顔を赤くして背けてしまった。 「……なぁ、何あの綺麗な子」 「あんな子いたっけ?」 「…おいバカ、あの子今朝門のところで生徒会長にいきなりキスされてた……」 そんなヒソヒソ話が行われていたことを知る故もなく、俺たちは注文して席に着く。流石金持ち学校、食堂も広く注文の仕方を幸ちゃんに聞く。 人に関する記憶が抜けていて一般的な常識や知識は残っている、と言ったが俺は料理に関する知識も所々抜けていて、名前を聞いても味も見た目も思い出せないものが多くなんとかわかるものを適当に注文した。 それにしても、食堂の1箇所に人だかりが出来ている。何かあるのかのぞこうとしたが人が多すぎて分からなかったので、大人しく食事を取った。 「ふ〜っ、食堂って言うから舐めてたけど凄い美味しかった」 「ふふ、よかったね。食堂とは言っても腕のいいシェフが沢山集まってるんだよ」 「うわぁ、流石金持ちって感じだな〜」 そんな何気ないやり取りをしていると、先程の人だかりに隙間が出来ている。遠目からそこを見ると、今朝の変態生徒会長がいた。 ……ゲッ 目をそらすよりも早く生徒会長と目が合う。目が合った生徒会長は目を見開いて、どんどんと俺の方に近づいてきている気がする。 に、逃げた方がいいのだろうか。 逃げようと後ろを振り向く。幸ちゃんも生徒会長にに気付いたようで早く行こ、と急かしてくれる。 「おい、そこの1年待てよ」 生徒会長のよく通る声が聞こえたが、俺の事ではないだろうと食堂を出ようとしたその時──。 「ちょっと、涼宮(すずみや)様が呼んでるのに無視とか何様?!生意気なんだよ!」 幸ちゃんに劣らず顔の可愛い女の子のような男の子が複数人俺の前に立ちはだかった。 「お、俺?」 「そうだよ!!!アンタ今朝涼宮様とキスしたくらいで調子乗るなよっ」 チワワのような子達が睨んで俺の肩を突き飛ばす。なんだよ、俺がしたくてしたわけじゃないのに…。
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