記憶喪失と学園生活

親睦会

そのまま幸ちゃんと葵さんと3人で談笑したり、ゲームをしたりしていると大きく鐘の音が鳴った。驚いて顔を上げると、その鐘の音が終了の合図だったらしく次々に鬼Tを着た生徒たちが体育館に入ってくる。

沢山番号札を首に提げている人もいれば全く番号札を取れていない(それとも取ってないのかも)人もまばらにいる。

番号札の枚数をそれぞれ集計しているらしく、それから30分ほど時間が過ぎた。

『えー、それでは今回の親睦会の結果を発表したいと思います！』

司会らしき人物がマイクを持って壇上に上がる。集計したのであろう紙を見つつ、声を張り上げる。

『まずこの親睦会を逃げ切った猛者達が今回はなんと2組！1組目は神宮寺様緒方様ペア！2組目は高橋くん神山くんペア！』

キャァア！！！と男子校に似つかわしくない歓声があがる。もう1組の人達には悪いが、この歓声は明らかに生徒会の涼先輩と環さんへのものだろう。

『そして鬼側 ──…なんと番号札を合計40枚も集めました！我らが生徒会長涼宮様と神矢くんペアです！』

更に体育館が割れんばかりの悲鳴があがる。中には抱いてー！だとか選んでー！だとか意味のわからない掛け声まであがり、会場はどんどんヒートアップしていく。

『えー、逃げる側は抽選となりますのでこちらで抽選を行いたいと思います』

司会がそう言い、ゴソゴソと箱から紙を引いた。その中身を確認し、すぅと息を吸う。

『逃げる側の優勝者は…………高橋くん神山くんペアです！！！』

途端、ええーっと大声が可愛らしい子達から上がる。……この空気、高橋くん？と神山くん？がちょっと可哀想だな。

環さんと涼先輩を見れば2人とも無表情で、特に抽選に外れたことなんて気にしてませんと言った感じだ。だけどちょっと付き合いのある俺にはわかる、環さんはどうでもよさそうだけど涼先輩は内心舌打ちくらいはしていると思う。

高橋くんと神山くんとやらはまたもや俺の知らない人を指名していて、指名された人は恥ずかしそうだったり嫌そうだったりしている。

そして、注目は勿論生徒会長の颯斗先輩なわけで……誰を指名するか分かっている、というよりも自分が指名される事を分かっている俺は気が気ではない。

『さぁ！大注目の涼宮生徒会長は誰を指名するのでしょうか？？』

司会が楽しそうに颯斗先輩にマイクを渡す。体育館は静まり返り、颯斗先輩に注目している。中には興味なさそうにしている男子たちもいるが、ほとんどの生徒が壇上の颯斗先輩をガン見している。……怖ぇよ。

『──……俺が指名するのは1年A組の橘香澄だ』

ザワッと体育館中がざわめき立つのと同時に、驚いたように隣の幸ちゃんが俺を見る。俺は苦笑いをしつつ、周りに気付かれないように顔を隠す。

『おおっとー！！！生徒会長は橘香澄さんを指名！！！！1年A組橘香澄さん！！！壇上にお上がりください！！』

……そうだった。壇上に行かなきゃ行けないんだった……。