親睦会

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そっと人混みの中を進んでいくと、俺が橘香澄だと理解したらしい周りが俺の顔をじっと見てくる。 なんとかかき分けて壇上に上がると、可愛い男の子たちは俺を睨んでいるし普通の男子生徒達は何故か俺をニヤニヤしながら見るし……。 居心地が悪いどころではない。 『橘香澄さんに上がってきてもらいましたが生徒会長が指名するのも頷けますね〜!!!それでは次、神矢くんに聞いてみましょう!神矢くんは誰を指名しますか?』 そういいつつ司会が蓮にマイクを渡す。蓮は周りのことなどどうでもいいと言わんばかりに俺を見つめながら、『カスミ』とだけ呟いた。 『か、神矢くん、カスミとは?』 司会が聞き返すとじろっと蓮が司会を睨んだ後、俺を抱きしめた。 『だから俺が指名するのはカスミだって』 途端に割れるような盛り上がりを見せる会場、ポカンとする俺、しかめっ面の颯斗先輩、してやったり顔の蓮という構図ができ上がる。 『な、な、なんと!!!!生徒会長と神矢くんが同じ橘香澄さんを指名ーッ!!!!これは盛り上がります!!!』 司会が慌てたようにメガネを指で直しながら大声をあげる。 『それでは2人から選ばれた橘香澄さん、一言お願いします!』 ずいっと口元にマイクを寄せられ固まる。え、俺も一言言わなきゃいけないのか!?全校生徒が注目するなか、何を言うべきか頭をフル回転させた。 『…なんでこんな事になったかよく分かりませんが…た、楽しんできます…』 喜んでも嫌がっても敵を作るだけだと思った俺はどっちとも付かない言葉でお茶を濁した。それに満足してくれたのかは分からないが、生徒たちからは歓声が上がる。司会も俺からマイクを離し、締めの言葉に取り掛かった。 これだけの事に体力を全て持っていかれた俺は、緊張感から解放されほっと安堵の息を漏らす。 後ろで俺には引っ付いている蓮とそれを引き剥がそうとする颯斗先輩の一悶着が行われていたが面倒なので無視した。 この事で、ただでさえ注目を浴びがちだった俺は全校生徒の注目の的になってしまった事を後から知るのだった。
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