デート

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当日、俺と蓮はとりあえず支度をして校門へと向かった。親が持たせてくれた服、どれもこれも肌触りのいい高そうな服ばっかりで汚したらどうしようとか意味の無い心配事をしちゃうんだよなぁ。 校門の前には、高そうなピカピカの車の前に高そうな服を着た颯斗先輩が立っている。顔もスタイルもいいからさながら芸能人のようで、土曜日だというのに多分親衛隊達なのだろう、男子たちが周りでキャーキャーと騒いでいる。 「おい、来たぞ」 人だかりが邪魔だと思ったのか蓮が低い声で呼びかければ、蓮を見てビビったように親衛隊の子達が逃げ出していく。 「お前がいるとチワワ共がいなくなる事だけは利点だな」 親衛隊にうんざりしたように颯斗先輩が手を振る。そして俺を見てニヤリと笑った。そのまま俺の頬をするりと手で撫でる。 突然のスキンシップにびくっと反応すると、楽しそうに俺を見て笑ってくる。 「ちょっと、辞めてください」 「私服も似合ってるな」 「…………」 俺が文句を言っても反省するどころか何故か口説かれたので黙ってしまう。前からだけど、この人愉快犯だよ絶対。俺が変な反応するの見て楽しんでるんだ…。 「おいカスミに触んな」 蓮が後ろから俺を抱きしめそう威嚇している。 「あぁ?!お前は触ってんのに俺はダメなのかよ」 また喧嘩が始まりそうだなぁといつもの光景を呆れて眺めていた時。 「颯斗様。お時間来てしまいますよ」 運転手なのか分からないが、これまたとびきり美形な人が出てきた。燕尾服というのだろうか、そういう服を着ていて白い手袋をし、メガネをかけている。黒髪を綺麗にオールバックにしていて、右目の下に泣きぼくろがありなんとも色っぽい人だ。 「…そうだったな。今日はデートだ、おら神矢、香澄乗れ」 颯斗先輩がそう言って、蓮を先に中に押し込む。その後に支持され車に乗れば、綺麗な車内が広がっている。 「……デートデートって、3人でデートするなんて聞いたことないよ。しかもこんな高そうな車で…」 思わずそうぼやく。 どこに行くかは知らないけど、この車で街中を走ればこれまた注目されちゃうんだろうなぁ。この学園に来てから注目される事ばかりで、少し注目される事に慣れてきたかもしれない。 「先輩、今日どこ行くんですか?」 ずっと気になっていたことを聞くと、颯斗先輩はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべるだけで教えてくれない。…なんだろう、金持ちのデートってなにするんだろ。 高級レストランで食事とか??それはちょっとやだなぁ、事故ってから金持ちの感覚を忘れちゃったから高いところだと居心地が悪そう…。 あらゆる想像を巡らせながら、車に揺られていた。
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