デート

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…す、すごいいい話だなぁ…。 映画を見ながら俺は思わずうるっと来ていた。何の気なしに選んだ映画だったけど、幸せなカップルに悲劇が訪れ、それを2人で1緒に乗り越えていく…。ありがちな内容かもしれないけど俳優さんたちの演技力が凄い。 この感動を分かち会おうと、隣の連を見ると気持ちよさそうに寝ている。……蓮にはまだ恋愛映画は早かったか…。 期待を込めて颯斗先輩の方を見る。 颯斗先輩はどきっとするくらい真っ直ぐに俺を見ていた。な、なんでこっち見てるんだろ。俺と同じで丁度感動を分かち合いたかったとか……? 「え、映画感動しましたね…?」 小声でそう言うと「ん?そうだな」と気のない返事。……これ絶対映画の内容見てないと思う……。 なんで目を逸らしてくれないんだろ…。ずっと見つめられたままだとこっちも目を逸らせなくて、じっと見つめ合う形になる。いい加減見ないでくださいと言おうとした時、颯斗先輩の手が俺の頬に触れた。 そのままずいっと颯斗先輩の顔が近づいてくる。 ……えっ?!え??! な、なにする気なんだこの人?! さっき恋愛映画で濃厚なキスシーンを見たせいで、その事しか頭に浮かんでこない。それにこの人前科あるし!!!! どんどん近づいてくる颯斗先輩の顔を見ていられず目をぎゅっとつぶり、膝の上で手を握った。 ………………………?? 少したっても何も無いので、恐る恐る目を開けば少し遠くににや、と意地悪に笑う颯斗先輩がいる。 ……からかわれた……! じわっと顔が熱くなるのがわかる。この人ほんとこれだから嫌だ!人をからかって反応見て楽しんでるんだどうせ……! 「何されると思ったよ?」 「うっ……」 意地が悪すぎる、俺が何されると思って目つぶったのなんて分かりきってるくせに。答えられる訳もなく、颯斗先輩から視線を逸らした。 すると、ふに、と頬に柔らかいものが当たり離れていく。驚いて颯斗先輩を見ると、また意地悪そうに笑っていて。 「こういう事されると思ったんじゃねぇの?」 と答え合わせがついてきた。 「なっ……!」 思わず大声を上げかけたがここが映画館なのを思い出し周りを見渡す。よ、よし。とりあえず誰にも見られてはい無さそうだ。蓮もスヤスヤ寝てるし…。ここで蓮が起きてたら乱闘騒ぎになりかねない。
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