デート

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※颯斗視点 ……危ねー、口にする所だった。 顔を真っ赤にしている香澄を横目で見る。……これで少しは俺を意識しろ、馬鹿。 元々映画なんて見るつもりもなく、映画を見て表情をコロコロ変えている香澄を眺めていたわけだが。嬉しい時や感動した時にこっちを見てくるのが正直可愛くて我慢が効かなかった。 ……口にしなかったのは香澄を襲った馬鹿達と一緒にならないように我慢したかっただけだけどよ…この反応満更でもねぇのか? …いや、この鈍感の事だ。期待するのはまだ早いか。 俺にと思ったのか、香澄が顔を真っ赤にしてこっちを睨んでくる。そんな顔も最早煽っているようにしか見えないので俺以外の前でそんな顔するなよと思うんだがコイツは無自覚にこういう事やってんだろうな、と半ば諦めモードだ。 それに1番厄介と思ってた神矢も寝てるし。ライバルの前で寝るなよとも思うがコイツは恋愛映画なんて見る柄でもないだろうからな。この映画館とやらの硬い椅子で良く寝れるもんだ。 大体、神矢はいっつも香澄に抱きつきまくって同室でベタベタしてるだろうに俺が触ったら警戒するのが気に食わねぇ。 「はいはい、俺が悪かったって」 そう言って睨んでくる香澄の頭を乱暴に撫でる。 「もーっ、ホントに反省してるんですか?」 もーってなんだもーって。可愛いことばっかり言いやがって。 いや違うな、チワワ共がもぉ、とか言っても気持ちわりぃぶりっ子だな位にしか思わねぇだろうし。…これが惚れた弱みとかいうやつか? そもそも今までの俺だったらもっと相手の事なんて考えずにガツガツ行ってさっさと体の関係持っちまってたってのに、なんで香澄相手には強く出れないんだ。 香澄が襲われた時もそうだった。この学園じゃそういう話は珍しくなくて、割と聞く話だったのに、今までにないくらい殺意が湧いて柄にもなく必死に探し出したりして。…親の力使ってまで学園から追い出したり。俺だけじゃなく、神宮寺があんなになってるのも始めて見たし。 自分の想い人がモテるっていうのは、自慢な反面いつ誰に取られるか分からないってことだ。大丈夫だろうと思っていた葵ですら親睦会の後から妙に香澄を意識してるのがわかる。 色んなやつに好かれているのに特に自覚もなさそうな香澄を見て、俺は軽くため息を着く。 ……まぁ誰が相手でも譲る気はねぇけどな。
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