放課後と生徒会室

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放課後と生徒会室

放課後、幸ちゃんは心配そうに俺を見ていた。 「本当に行くの?」 「……でも行かないとあとが怖いし。それに、話が通じない感じじゃなかったから大丈夫だと思う」 「昼はびっくりしたよ。涼宮様は他の人には常にもっとこう暴君って感じで、謝ってるのなんて初めて見たし…僕心配だよ」 「ありがと幸ちゃん。何かあったらすぐ逃げるから心配しないで」 「……うん。場所分からないでしょ?僕送っていくよ」 幸ちゃんは優しいなあ。 事故にあって記憶を失っちゃったけど、その先でこんな可愛いくて良い子と出会えて俺はきっと幸せ者だ。 幸ちゃんに連れられ、俺は大きなドアの前に立った。開けようとしたが止められ横にあるインターホンのようなものを指さされる。 …ただの生徒会室にインターホンですか。 俺がそれを押すと、出てきたのは涼宮ではなかった。 凛とした顔立ちで眼鏡をかけ、綺麗な黒髪を耳にかけて涼し気な瞳を俺に向けている。……誰? 「…夏澄くん、この人副会長の神宮寺涼(じんぐうじりょう)様」 幸ちゃんがこっそり耳打ちしてくる。なるほど副会長。 神宮寺とやらは、俺を見てまるで愛おしいものを見るような目をしたあと俺の手を取り手に口付けを落とした。 「………………は?」 固まる俺、驚く幸ちゃん、相変わらず愛おしそうに俺を見る神宮寺。 ……やっぱり来なきゃ良かった。 敵は涼宮だけじゃなかった。 俺は頭の中で強くそう思った。 俺たちは生徒会室の中に通された。幸ちゃんは僕も!?と驚いていて、巻き込んでごめん…という気持ちしか湧いてこない。 神宮寺は俺たちに紅茶を出してくれる。少し飲むと、神宮寺がソファに座っている俺の横に座った。 …………近い 「ちょっと、近いんだけど…」 「だってようやく見つけられましたから。これくらい許してください」 「何の話だよ」 俺がぶっきらぼうに接しても神宮寺は聞く耳なしという態度だ。見つけられたって涼宮も言ってたけどなんなんだろうか。 涼宮がようやく現れ、俺たちの間に緊張した空気が流れる。何を言われるのかずっと考えていたがやはり記憶喪失のせいもあって思い当たる節なんてないし。 「お前、名前はなんと言うんだ」 1言目はそれだった。思ってもみなかった質問に呆ける俺と幸ちゃん。
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