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「あったかいでしょう?」
「……まぁ、そうだね」
向日葵の少女が何だか嬉しそうでも、白い天使は笑わない。彼女にとって笑える理由が其処に無く、分からないからだ。
向日葵の少女に返した言葉から態度が表れるくらいに、白い天使は面倒臭がり屋である。理由を聞いて知ったとしても、分かろうとはしない事だろう。
「でもよく分からないな、人間の考える事は。……何で嬉しそうなの?」
彼女は人間ではない。文字通りに天使だから、人間である向日葵の少女の考えている事を理解出来ずにいた。
白い天使はその苛立ちによって、向日葵の少女から振り解く様に手を離す。同時にスカートの右ポケットから、そして彼女自身から離れようとする。少しずつ、少しずつ──
「あ」
向日葵の少女の口から漏れる様に声が出た。白い天使の足元のそれに気付いたからだ。
「……何?」
「枯れてしまっても、向日葵を蹴飛ばさないで」
向日葵の少女が云う様に、白い天使の足元には枯れた向日葵があった。しかし白い天使は面倒臭がり屋なのでそんな事にお構い無しと、更に歩を進めようとしながら、
「どうして──」
白い天使は彼女に言い切る前に、
「積もった雪と共に転んじゃ……あ」
また向日葵の少女が言い切る前に、
「ぎゃふん!」
白い天使は雪の絨毯とキスする様に転んだ。
「……大丈夫?」
向日葵の少女は白い天使に右手を差し伸べて、起こすのを助けようとする。
「つーーっ、こんな所に枯れた向日葵なんか捨てないでよ!」
雪の絨毯から顔を上げた白い天使は、おでこと頬がちょっと赤くなっていて半泣き状態だった。全体的に白い容姿なので其処に居るという事が、ちょっと離れているところからでも分かりそうかもしれないし、そうでないかもしれない。
「捨てちゃいないんだけどね。其処、花壇だから……。でもまぁ雪がこれだけ積もったら足元が全く分からないよね」
「……大丈夫、自分で立てるから」
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