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僻んでいるのか向日葵の少女の差し伸べた手を拒んで、白い天使は自力で起き上がった。その為、向日葵の少女から笑顔が消え、悲しい表情になった。
次の夏は、綺麗な向日葵が見れなくなりそうなバチが当たるかもしれない。もう遅いかもしれないけど転ぶのは嫌だから、一歩一歩、枯れた向日葵を踏んでしまわない様に気を付けて、雪の絨毯を懸命に進む。
向日葵の少女は何か気になるものを見つけたのか、笑顔を取り戻した。
「彼処まで行こう?」
未だ雪の様に綺麗なままの思い出が消えない様にただ祈って。こんな夢物語は二度と叶わないだろうなと、今の幸せを噛み締めて。
未だこれからの雪だけで無い道を。
二人は作り、歩んでいた。
時間が少し、少しずつ、
止まる事なく進んで行く。
忘れた訳じゃないけど、
良い思い出が一つ、また一つ遠ざかっていく。
「……」
忘れた頃には良い思い出だけが一つ、一つ、
近付いていけたらいいとも願っていた。
「あぁ……」
時間が過ぎるのが早過ぎるの、ずるいよね。
* * *
一年周って、同じ季節が巡る。
「……人間って、虫と同じくらい短いものね」
聞き覚えのある声が、未だ何も書かれてない白紙のページの様に辺り真っ白な世界の上に零れた。
声の主は藍色のスカート丈が短い修道服に、アルファベットでWの字を書いた形の白いケープで身を包んで、胸元に青の細いリボンを結んでいる。またリボンの下では、白く光る十字架をネックレスとしてぶら下げている。
「あの時、手を取ってあげた方が良かったか」
同じ声の主の背には白い翼、頭上には輪っかがある。今にも消えそうな、でも消えない翼と輪は儚げで透明に近い状態を保つ様に現れている。
その声の主曰く、髪型は自分の意思に反してその時によってよく変わるらしい。今はいつかの向日葵の少女に同じセミロングだが腰近くまであり、外側へ"し"の字を書く様に少しはねている。
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