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それから更にまたとある日を境に、仕方なく返事を返す様にしたら、いつも以上に笑顔が増えた向日葵の少女。
冬の初めで寒く、それでも何となくぶらつく様に一緒に歩き出掛けた日の、向日葵の少女。
(……巡って)
春の初めで色とりどりの花が咲こうとしているのを知って、一緒に花見に外へ出ようと振り返ったら、突然咳をしながら倒れた向日葵の少女。
未だ夏が始まる前で春が終わろうとする頃、白い病床で苦しそうに咳を続けて、同時に紅いものが零れるのを繰り返す向日葵の少女……
一つ咳をした途端に、糸がプツンと切れてしまった様な呆気ない最期──
「どんな昔の良い時間、悪い時間を思い出したところで、過ぎた時間は取り戻せないわ」
「……そうだね」
白い天使の脳裏で、向日葵の少女の笑顔が最後にフラッシュバックすると、彼女は許せなくやり切れない表情になった。
「何だよ、普段はよく転ぶ泣き虫な癖にかっこいい事を言ってくれちゃって」
「良いじゃない。悪魔なんだから、ちょっと現実的な嫌味も言ったりしてかっこつけたいのよ」
白い天使は何かの戦いに負けて悔しい感じで舌打ちした。それでも未だ何かの戦いは続く様に、紅い悪魔のターンは続いた。
「過ぎてしまった時間を取り戻せないところは皮肉にも、天使、悪魔でも人間と同じだわね……」
紅い悪魔は白い天使から離れようとする。何かを見つけた訳では無いが逆に、何かが見つかるかなと好奇心から動き出したのかもしれない。
紅い悪魔の目の前に実際にある訳では無いが、双六でサイコロを投げて目が出た分だけ動こうとする様なゲームを、彼女の中で勝手に始めていた。
どんなルールでやっているかは彼女のみぞ知る。
白い天使はそんな彼女を冷ややかな目でただ眺めていた。紅い悪魔はゲームの流れに沿う様に、少しずつ、少しずつ、
「──待って」
白い天使は紅い悪魔を呼び止める。
「……枯れてしまった向日葵でも、踏ん付けてはダメよ」
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