スノースマイル

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スノースマイル

「冬が寒くてほんとに良かった」 と、黒いセーラー服の少女は云った。 「どうして? 寒いのに?」  全体的に容姿が白い感じの女の子はきょとんとして首を傾げた。 「こうして手を温められるから」  黒。趣のある表現で云うなら、烏の濡れ羽色で統一された様なセーラー服のスカートとセミロングの髪が、写真を一枚撮ってみればとても映える事だ。  他に色があるとしたらそれは、セーラー服の胸元で結んでいる赤いスカーフと、白に近い様な灰色のカーディガンを上着として羽織っているくらいだろうか。  肌が病人の様に色白の少女は、夏の間は向日葵を大事そうに茎の部分を手放さないでいるが、今は空の手で何も無い。しかし彼女そのもののイメージとして定着している。 ──彼女の事を云うならば、"向日葵の少女"だ。  向日葵の少女は不意を突く様に、白い女の子の冷たい左手を捕まえて握った。気を許せる相手だからなのか、白い女の子は彼女に抵抗は特にしない。  だから向日葵の少女はそのまま自分のスカートの右ポケットに、また自分の右手と一緒に招き入れた。 「……こうしたかったの?」  全体的に容姿が白い感じの女の子は"白い天使"。  フリルの付いた白いワンピースで身を包み、彼女の胸元には白と水色のストライプ柄の大きなリボンを結んでいる。そして童話シンデレラにも出ているものと同じ様な硝子の靴を履いている。  天使らしく彼女の背後には白い翼と、頭上に輪っかもある。今にも消えそうな、でも消えない翼と輪は儚げで透明に近い状態を保つ様に現れている。  また彼女曰く、髪型は自分の意思に反してその時によってよく変わるらしい。白い髪は今はツインテールで左右に小さな弧から大きな滝を描き、足元の硝子の靴に辿り着くくらいにとても長い。 「うん」  向日葵の少女は嬉しそうに笑った。 「ふーん……」  白い天使は笑わなかった。  そんな二人が、未だ何も書かれてない白紙のページの様に辺り真っ白な世界の上に立っていた。
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