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『どなたでしょう?』
冷たい声が耳に刺さる。
「あ、あの…。このスマホの持ち主だと思う方は 今目の前で寝ていらっしゃいます。」
『貴方が助けてくださった、ということで宜しいのでしょうか?』
「な、何もしていませんが…。 意識はなくて、呼吸が少し苦しそうです。」
つっかえながらも男の現状を伝えると、電話の相手は小さく溜息を漏らしたようだった。
『場所は?』
「○○駅の東口から出て右手の暗くて細い道を進んで少ししたところにある公園のベンチです。」
『ありがとうございます。今直ぐそちらに向かいます。我々が来るまでそちらに待機していても宜しいでしょうか?』
「大丈夫です。」
『何かありましたらまたご連絡ください。』
「はい。」
架瑠がそう言うと、電話はすぐに途切れた。無意識に緊張していたのか、指先はとても冷えて震えていた。架瑠はスマホを元の場所に戻すと、 冷えた指先に暖かい息をふきかけながらじっくりと男の顔を見た。苦しそうな表情を浮かべる男をどうにかして楽にしてあげたいと思った架瑠は、ふと、男の右側の腹の辺りが膨れていることに気づき、ズボンからシャツを取り出して、ワイシャツの下の方からボタンを外し始めた。
ボタンを3つほど外し終わった架瑠はひっと声を上げて思わず男から手を離した。
男の腹部には丸まったタオルが当てられており、そのタオルは元の色が分からないほど赤く染まっている。
「…何か布を。」
医療についての知識はないものの、ドラマや小説からの知識をもとに止血をするべきだと思った架瑠は、急いで自転車まで戻り、カゴに入れっぱなしにしておいた自分の部活用の青いタオルを取り出した。
「清潔な布がいいんだっけ?」
そうはいっても、他に何も無い。タオルを握りしめて男の元へ走ると、傷口に強く当てた。歯を食いしばった男の口から呻く声がもれる。
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