第1話

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「ご、ごめんなさい!我慢してください!」 タオル越しに伝わってくる男の生暖かい血の温 度、暗く静かな空間に聞こえる男の荒い息遣い。架瑠は震える右手を左手で押さえつけ、音を立てる歯を食いしばった。 その時、少し遠くから声が聞こえた。耳を澄ますと、複数人の男が誰かを探しているようだ。 架瑠は先程のスマホを取り出して、着信履歴を開き、浅倉薫に電話をかけた。 『もしもし。』 「あの、すみません。もう近くにこられていますか?」 『いいえ?あと10分ほどかかります。』 「……え?」 『何かありましたか?』 少し焦ったように相手が聞く。 「えっと、まずこのスマホの持ち主の方、腹部の 右側に怪我をしていて、とても血がでています。今、タオルで傷口を押さえています。」 相手が息を呑んだのが分かった。 「それで、先程から男性の方が複数人、誰かを探しているような雰囲気の声が聞こえて…」 「おい!どこだ藤堂(とうどう)!出てこいやあ!」 その時、すぐ近くで男が叫んだ。慌てて後ろを向くと、公園の入口に男が1人立っている。こちらには気づいていないようだ。 『貴方の目の前で寝ているのが藤堂です。』 「え?」 先程の男の声は向こうにも聞こえていたようだった。架瑠は驚いたが、声を必死に飲み込む。
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