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グランドピアノの譜面板から、一人の女生徒が顔を出す。
「あ、高峯くんとショウだ」
「外山。練習中だった?ごめん、高峯くんに学校の中案内してたんだ。すぐ出ていくから」
「いいよいいよ。気にしないで」
外山明里とは中学が一緒だった。同じクラスになるのは3回目だ。音大を目指していて、休み時間は許可を貰って音楽室でピアノを練習している。
「ねえ、高峯くんって中学一年生の時にジュニア音楽コンクールの中学生の部で全国優勝してたよね? 名簿見た時すぐにピンときちゃった」
「うん。昔の話だけどね。外山さんも出てたの?」
「まあね。県大会で銀賞だったから全国には進めなかったけど…。高峯くんの演奏動画見て、すごく感動したの。同い歳でこんなに弾ける人がいるんだって」
アキラはピアノが弾けるのか。それも相当な腕前らしい。ほんの少しだけ劣等感が刺激される。
肝心のアキラはというと、笑顔を貼り付けてはいるが僅かに表情が強ばっている。
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