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信仰強度
ひとまず、対応については協議する、として梅園を帰した。彼は、美月の両親に話をしていないらしいので、直接美月の方へ連絡するのではなく、梅園を通すことになる。
「こっくりさんねぇ」
集団催眠のようなものだ、という話を聞いてから、つい「こっくりさん」については猜疑的になってしまうルイである。
「でも、信仰強度は高いよね」
「なんだい、信仰強度って」
ナツが首を傾げた。ルイは片目をつむって、
「信仰の強さって言うか、有名になりやすいとか、信じられやすいっていうか」
「なるほどね」
「確かに、室長の仰るとおり信仰強度は高いです。具現化する可能性も高い」
アサが顎に手を当てた。
「ただ、一般的に言われるように、集団ヒステリーの可能性も高い。まずは五条が梅園のお嬢さんに貼り付いて一緒に目撃するしかないでしょう」
「そうだね。美月ちゃんだっけ。その子がオッケーくれたら一緒に登下校すれば良い? 転校生のフリする?」
「転校生のフリは学校の協力がいるだろ」
メグの提案、アサが苦笑した。
「そっかあ。よくある潜入ものってどうやって手続きしてるんだろうね」
「知らねぇよ。どっか潜入したい所でもあんのか?」
「ないっ」
メグは言い切った。ルイはそれを聞きながら考え、
「現実的なのは、連絡先交換して、登下校時に連絡もらって同行することだよね」
「そうですね。その上で、もし出現ポイントに規則性があるなら佐崎が張って撃つしかないでしょう」
「規則性なかったら? 車で尾行するかい? あたしたちが通報されそうだけど」
ナツがにやにやしながら問うと、アサは唸った。
「梅園美月には説明して五条からも太鼓判を押しておけば良いだろうが、問題は通行人だな。地域住民から目を付けられたらそれで時間を食いかねない」
メグは戦う術がない。戦えるナツたちが不審者と目されて地域住民から足止めを食うと後々厄介かもしれない。
「いや、別に自家用車に見える車じゃなくても良いんだよ。パトカーに乗っていこう」
都伝に入ってからめっきりパトカーに乗る機会は減ったが、そもそも警察車両といえばパトカーである。ルイが提案すると、
「んん、良いね。じゃあパトカーで後をつけよう。決まり。美月ちゃんには、最初にあたしたちも挨拶して顔を覚えて貰えば良いさ」
ナツが締めくくった。メグが首を傾げて、
「都伝ってパトカー使えるの?」
「それを何とかするための室長だよ」
かっこつけたくなって、ルイは答えながらウィンクして見せた。
細かいことやパトカーの使用についてはまた根回しをするとして、ひとまず大まかな方針は決まった。翌日、ルイから梅園に連絡を入れた。これこれこういう方針でどうだろうか、と告げると、まずは彼女の両親に話してくれるという。
しかし、数日後彼が慌てて連絡してきた内容は意外なものだった。
「学校が対応に苦慮している。美月の親を通して都伝の話をしたら、警察が来てくれるならありがたいとよ。どうする?」
「わかった。学校には僕からも連絡する。どこの学校?」
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