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橋の向こうに、見慣れない角ばった建物がひしめいています。
そして、天にも届きそうにそびえる異形の塔。
とても人の成せる業とは思えません。
ここは、わたしが知る街ではないようです。
考えないようにしていたことを、認めざるを得ない時が来てしまいました。
わたしはあのとき、業火に呑まれて死んだのだと。
ならば、ここは天国でしょうか。
天国なら、あんな塔がそびえていてもおかしくはなさそうです。
たくさんの人々が行き交っています。
はしゃぐ幼子も見守る人も、みんな幸せそうです。
ここは天国ですから。
母と姉のことを思いました。
そして、遥か遠い戦地へと赴いた、あなたを。
あなたは、ここにいました。
不安に押し潰されそうになりながら、彷徨って彷徨って。
ベンチに腰掛けて本を読む、あなたを見つけました。
声を上げて泣きたくなりました。
喜びそうになってしまう自分を必死で抑えます。
あなたは、大切な人を残して、こちら側へ来てしまったのですね。
あなたから見たわたしは、青くさい子供にすぎません。
あなたは優しくて頼りがいのある、お隣のお兄さん。
遊び相手のお兄さんが憧れの対象に変わったのは、いつのことだったでしょう。
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