煙草と幸せ

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1本だけと思っていたがいつの間にか2本3本と吸ってしまった。だんだん気分が落ち着いてきた気がする。これで最後にしようと思っていると、後ろのベランダの扉がガラッと空いた音がした。驚いて振り向くと、そこには後1時間後にくるはずの恋人がいた。 「え?楓? は、早いね。」 思わず吸っていた煙草を隠してしまった。もう既にバレているということ分かっているのに、罪悪感がそうさせる。彼女は焦っている僕を見て、穏やかに微笑んだ。そして、靴下のまま、僕の横に並んだ。彼女は夕日を眺めながら、 「大丈夫だよ。隠さなくて。身近に吸う人いたから、嫌悪感は何も無いよ。でも、吸うとは知らなかったな。初めて吸ったのは、いつ?」 「えっと、うーん、前の会社で働いて半年たった頃ぐらいかな。」と少し戸惑いながら答える僕を気にする様子もないまま、彼女は話を続ける。 「あー。しんどかった頃だよね。分かるよ。本当に辛い時って正気じゃいられないっていうかお酒とか煙草頼りたくなるもんだよね。私は全然いいと思うんだよなー。世の中、煙草とか特に厳しいじゃん?」 「うん。そうだね。」 彼女のいつもと変わらないどんなことも受け入れ、包み込むような空気感に不安定だった情緒が落ち着き始めた。 「マナーとかは守らなくちゃいけないと思うけど、なんか世の中って肉体面ばかり気にして、精神面がおざなりだよね。確かに、病気のリスクは上がるだろうけど、精神的に病死でもしちゃいそうなら吸ってもいいじゃん。バランスだよね。肉体をあまりに蝕むほどじゃないなら、いいよ全然。」 と僕の腰に手を回して、こちらをみて微笑んだ。 「ありがとう。」 ぼやけていた頭が、だんだんハッキリとしてきた。
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