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うちの学校は海沿いにある。潮の匂いと、見渡す限りのブルー。なんつう素敵な通学路だ。学校の帰り道、俺は駅までの道のりをいつものように、海を見ながら黄昏れる。あぁ・・最高。なんだが。
「おーーーい!ひーでーとー!!」
・・こいつがいなけりゃな・・。
「待ってよー!校門で待ち合わせって言ってるでしょ!」
そんな約束した覚えなどない。
「はぁ、はぁ・・やっと追いついた!ただでさえ駅までそんなに距離ないんだから!校門から!駅まで!一緒に行くの!わかった??」
「わからん。知らん。付いてくんな」
こいつは隣のクラスの橋立凛。なんか知らんが駅までの帰り道を一緒についてくる。何回やめろと言ってもついてくる。寄生獣かお前は。
「なんでよー!もう!毎日、一緒に帰れて嬉しいくせに。ねっ海見てこーよぉ!」
入学式が終わった後、初めての下校の時の話だ。今日と同じ様に、海を見ながら帰っていた。圧倒的なその風景に心を持っていかれ、魔が刺したんだろう。
ふと堤防の方に寄り道をした。数隻の漁船、海に浮かぶブイ、岸壁で網をつくろう老夫婦。そして遠くに見える白い灯台。絵に描いた様なその風景と、いつもとは違う時間の流れに、心を奪われていた。
そんな時だった。後ろから急に声をかけてきたのがこいつだ。
「海、好きなの?」
潮風に長い髪を解かれ、顔にかかったのを耳にかけながら、微笑んでそう聞いてきた。あの時は、入学式初日からラブストーリーが始まったと確信したんだが・・。
「いかない。こうやって眺めるだけで充分だ」
「いーじーわーるー!行こうよ行こうよー!寄ってこー!二人で夕暮れ見ようよー!」
俺の腕を掴んで必死に引き止めようとする。その間もずっと大声で叫びまくるから、同じ様に下校している女子達に白い目で見られる。いつもこの繰り返しだ。
「あーもう!はーなーせー!」
初めて出会った時の、ときめきが嘘だった。気の迷いだった。そうとしか言えん。俺は物静かで、お淑やかな女の子が好きなんだ!何回言わせんだ!
「もー!!一回やって捨てるなんて!やりたい時だけ優しくするなんて!!私は貴方のおもちゃじゃないんだからぁ!」
「あああああ!いっつもいっつもー!やめろその言い方!誤解されんだろうがぁ!」
またやってるあの2人・・でた最低男・・
あんな顔で取っ替え引っ替えしてるとか・・
まじキモ・・
「ベンチに手つけって!おしりこっちに向けろってー!無理矢理ぃ!何度も何度もぉ!」
「だからっ!やめろって言ってんだろうが!」
【ベンチに座ろうか、端だとおしり痛くない?ほらもうちょいこっち来なよ】
初日に言ったことを、そっち系の話に変換し、嫌がらせをする悪趣味変態女。超美少女なのに残念過ぎだろもったいない!
「ひーでーとー!!優しくしてよー!!」
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