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『……貴方は肉親に疎まれたことはありますか?』
それが俺がキングス・スタイナーの影武者に選ばれる際に、この後に生地の仕入れの旅に出るからと、支度をすっかり終えた姿の本人から尋ねられた質問だった。
"疎まれたからこそ、今この場に俺はいるんだが"
普段の、高慢な俺ならそう言い返したりもするんだろうが、それが出来ないのは、はっきり言って、名前をつけるのなら上品としか呼べないような圧力に圧されていた。
この優しく微笑みを称えながらも、非常に憤りを携えている人の前で、俺は精々頷くことしか出来ない。
『そうですか、それはどんな気持ちになりましたか』
『どうという事も……、私は元々魔法鏡の能力に極端に優れていたので、疎まれてもいましたが、そこを親から頼まれて覗きたくもない場所を見ていましたよ』
最初は命じられるままに。
でも、直ぐに自分が利用されているだけだと気が付いたから、自分のしたいようにしてやった。
でも、まだ未成年ということもあって、家督を継ぐにも早すぎるし、継いだら継いだで面倒くさいとわかっていたから、適当に。
親が俺の能力を誇りに思いつつも、思い通りに動かなくなってきてイライラしているのが、疎まれているのにも判っていたけれども、その気持ちを掘り下げようとも思わなかった。
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