ウサギの賢者と新人兵士のアルスくん 特典sample6

2/224
前へ
/224ページ
次へ
549bb43a-fdd8-4b85-bb3a-62e77ae8a0f1 『……貴方は肉親に疎まれたことはありますか?』 それが俺がキングス・スタイナーの影武者に選ばれる際に、この後に生地の仕入れの旅に出るからと、支度をすっかり終えた姿の本人から尋ねられた質問だった。 "疎まれたからこそ、今この場に俺はいるんだが" 普段の、高慢な俺ならそう言い返したりもするんだろうが、それが出来ないのは、はっきり言って、名前をつけるのなら上品としか呼べないような圧力(プレッシャー)に圧されていた。 この優しく微笑みを称えながらも、非常に憤りを携えている人の前で、俺は精々頷くことしか出来ない。 『そうですか、それはどんな気持ちになりましたか』 『どうという事も……、私は元々魔法鏡の能力に極端に優れていたので、疎まれてもいましたが、そこを親から頼まれて覗きたくもない場所を見ていましたよ』 最初は命じられるままに。 でも、直ぐに自分が利用されているだけだと気が付いたから、自分のしたいようにしてやった。 でも、まだ未成年ということもあって、家督を継ぐにも早すぎるし、継いだら継いだで面倒くさいとわかっていたから、適当に。 親が俺の能力を誇りに思いつつも、思い通りに動かなくなってきてイライラしているのが、疎まれているのにも判っていたけれども、その気持ちを掘り下げようとも思わなかった。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加