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すると、アングレカム・パドリック卿が宰相としてセリサンセウムという国の王宮の執務室にいる時に幾ら祈っても通じなかった「少しだけ席を外して欲しい」という、副官時代のユンフォ・クロッカスの希望を直ぐに察したように「少しばかり失礼します」と、バルサム姫は口にして、立ち振る舞いはすっかりに普段の淑女に戻して、宰相の執務を出て行ってしまったそうだ。
ユンフォ・クロッカス卿、当時の副官の青年からしたのなら、やはりバルサム姫は敢えて空気読まないで、副官的には席を外して欲しいと察しが良く、勘もそれなりに働くのなら、少しでも愛しのアングレカム・パドリック様の側にいたかったのだろうと、その時になって漸く確信を得る事が出来たと、「今でこそ笑い話」として、学府時代からの親友でもある相棒の護衛対象である、アングレカム・パドリック卿の跡を継いで宰相となったチューベローズ・ボリジ卿に語っていた。
ただ、チューベローズ・ボリジ卿にしてみたなら、学生時代は「穏やかの権化」と揶揄もしていた親友が、尊敬もしていたアングレカム・パドリック卿に文句を物申していた事の方が大いに驚きだったらしい。
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