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『……周囲の気持ちを掘り下げて、慮ってしまったのなら、自分のその魔力の才能を含めて尊厳に誇りまでも犠牲になってしまうと思いましたか?』
『……国最高峰の仕立屋様は、闇の精霊術を使って俺の心を読んだというわけですか?』
危うく"人の心を読む事は許可しない"といつも口癖を口に出してしまいそうだったのを抑えて、自分の心が拾い読まれたように、言い当てられた事についても質問をしていた。
すると上品に、クスリと笑って目元に紅色の化粧を施している黄金色の眼を細めて微笑まれて、俺もそれなりに手入れしているから、艶やかさには自信がある黒髪に劣らない、黒髪を、もうすぐ仕入れの旅に出る当たって今は結い上げているまとまっている毛先を左右に揺らしていた。
けれども、ふと気が付いたという具合に左右に振り、身嗜みとして唇に艶やかな紅を引いた口を開く。
『今回は闇の精霊を使わないだけで、貴方の環境に生い立ちから推考したに過ぎませんが、闇の精霊術を使えるか使えないかでいえば使えますよ。
貴方が魔法鏡だけが得手ではないのと同じ様に、私も得意な事で伸ばせる才能は伸ばしていますよ、シュピィギー君』
やはり嫋やかにそう微笑んで、そんな事を口にする。
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